2009年04月のアーカイブ

ビジョン

平成21年4月30
ビジョン

未曾有の危機の中に世界経済がおかれている。将来に希望を見出せない経営者が多い。かつて立てた中期経営計画は全くの反古になってしまった。ビジョンも崩壊した。じっと嵐の去るのを待つしかない。そんな意見をのべる経営者が多い。一見その意見は正しそうに見える。しかし本当にそうだろうか。疑ってみる必要がある。
まず「ビジョンとは」を考えてみよう。「ビジョン」は状況の変化に関係なく、企業が中、長期的にめざすべき目標でなければならない。たとえ現在は苦しくとも、数年先にはこのビジネスで、これだけの成果を上げ、社員・株主・お客様をはじめあらゆるステークホルダーに満足してもらえる為の、明確な、不変のものでなければならない。
次に「この不況がいつまで続くのか」であるが、3年間はダメだという人が多い。10年は続くという評論家もいる。本当にそんなに長く不況が続くのだろうか。今回の不況は、アメリカの住宅産業でのバブルに世界全体の余剰資金が集中し、その資金があまりに多かったので、あふれ出してバブルを形成した為である。
これは実体経済が、金融工学という仮想空間でのバブル形成手段に躍らされた結果にすぎない。金融不安が落ち着けば、急速に沈静化すると考える方が的を射ている。世界中の国々の政府資金の投入で、莫大な量の資金が注入されつつあり、早晩落着きを取り戻すであろう。
更に「じっと耐えて待つ」という姿勢は正しいのであろうか。過去の事例をひもといてみると、大変化の時に、何らかの適切な手を打った企業が、その後の世界で急成長をなし遂げている。この事を忘れてはならない。この打つべき手が、他社にない新技術の開発なのか、或いはユニークなサービスの提供なのか、新商品の販売、新分野への進出・・・その中身はいろいろある。要は萎縮するのでなく、衆知を集めて、ブレイクスルーするのである。確固たるビジョンの裏付けをもって、一歩一歩前進を続けていくのである。

電気自動車への道

平成21年4月28日
電気自動車への道

私の最初の職場は「石炭」であった。当時汽車は石炭を燃料としていた。それが「石油」に変り、ジーゼル車が走り出した。現在はすべての汽車も、ジーゼル車も、愛好家の夢と消えつつある。電車だけが、地上を、地下を走っている。電車がレールの上を走っているように、電気自動車が高速道路上を走れないのだろうか。原理的には可能である。直ちに可能である。経済的にも不可能ではない。システムが完成すると、コストは逆に大きく低下するであろう。
電気自動車への道は、近いことを忘れてはならない。ガソリンよりも電気(特に夜間電力の利用)の方が温暖化ガス排出の削減効果は大きい。ただ一つ大きなネックがある。それは電池の開発である。リチウムイオン電池が生まれ、あっという間に電池の主流になりつつあるが、まだまだ高価すぎる。安くて効率がよく、長時間の運転に耐え、短時間に充電できる電池の開発が、電気自動車への転換の時間を決めるであろう。それを2〜3年とみるか、5〜10年とみるか、いずれにしてもそんなに遠くないことを忘れてはならない。
車の軽量化の研究も進むであろう。1950年代のアメリカ車は数トンの総重量であった。現在のハイブリッドカーは1t前後である。高級車でもそんなに重くない。しかし私は車の総重量は500キロもあれば十分と考えている。風の影響に左右されない形が求められるが、重量を軽くするのは難しくはない。電池の軽量化、モーターの軽量化がすすめば軽すぎて困る車が誕生することであろう。
事故の衝突によるダメージを心配する人がいるが、逆に軽い車の方が、ダメージは少ないことに気付いてほしい。車はまだまだ軽くなっていくのも間違いないのである。そして電気自動車の可能性が増えていく。福井県は国の電気自動車実験の認定県となった。共に力をあわせ、知恵を絞って研究に参加したいと考えている。昨年ベストセールスマン賞(社内)として最優秀セールスマンにトヨタのハイブリッドカー・「プリウス」を進呈したが、「電気自動車」を進呈する日がそう遠くないと考えている。

千円乗り放題(18日間のゴールデンウィーク)

平成21年4月27日
 千円乗り放題(18日間のゴールデンウィーク)

3月28日から高速道路は千円乗り放題(ホリデー料金)が採用されだした。そして更に休日(土、日、祝祭日)の前日に高速道路に入り、休日に出る場合も千円、休日に入り、休日の翌日に出る場合も千円となる。長距離の観光旅行をすると、今年は4月24日から、5月11日までの間に高速に乗り、翌日或いは数日後に高速を下りても「千円乗り放題」が適用される。
今、キャンピングカーのレンタル、リースの利用客が急増しているという。各観光地もこの対策に乗り出している。全国各地のカーキャンピング場は突然予約のお客で満杯だという。観光地は嬉しい悲鳴を上げている。しかしここにも勝ち組と負け組に分れている。今の所、負組の分析はまだ終っていないが、おそらくその原因は「知名度」であろう。「知名度」の高いか低いかで、明暗が変る。観光地周辺の商業者を含め、「知名度」のアップに全力投球をはじめなければならない。
2年間の時限立法ということである。しかし2年間もホリデー料金のうま味を知った人々は、これを元に戻すことに賛成するはずがない。観光地をかかえる地方都市も同様である。時限立法はそのまま継続せざるを得ないと考えた方がよい。そうすると、一年の半分以上、正確には60%以上の日にはこれからは、ずっと長距離ドライブ者に「千円乗り放題」が適用されることになる。これは日本の観光地に革命をおこすことになろう。今まで「死に体」であった観光地に「喝」を入れ、繁栄をもたらすことは間違い。日本人の「ホリデー観」を根本から変えることになるであろう。
私達コインパーキング業界は、都市型ビジネスに特化してきたが、今後は「パークアンドライド」(電車の駅に車を駐車し、電車で目的地へいくこと)や観光地周辺での低価格駐車場の開発に力を注がねばならない。
また同時に、お客を郊外や遠方の観光地に奪われる、「デパート」「シティホテル」「商店街」等と組んで、「都心での魅力づくり」に、前面的に協力していくことが必要となるのを忘れてはならない。ここ数ヶ月間は、高速道路から目を離すわけにはいかない理由が、そこにある。

価値の転換

平成21年4月24
価値の転換

先日「キラリ会」の月例会で、スピーカーのデザイナー松山道明さんから「価値の転換」について、約1時間にわたって話を聞く機会があった。松山さんは福井県のデザイン界の草分け的存在で、種々のデザインを通して、地元業界や地場産業を指導され、松山さんの育てたデザイナーも多い。「キラリ会」の卓話の中でも、トップクラスのお堅い話に、列席のメンバーも謹聴の1時間であった。
私は人生は「価値の追求」であると考えている。数学的にも経営学的にも「付加価値の増大」を求めることであると考える。「喜びの種、幸せの種を蒔こう」と呼びかけ、自らも実践しようとしているのは、この付加価値の追求にほかならない。
松山さんは、情報化時代のデザインの役割は、「価値の転換」であるという。そして「価値の転換」は「新しいエチカ(倫理)の創生」であるという。「新しいエチカの創出」とは、新しい価値観の問題であり、デザインの哲学的な課題であるという。
松山さんは、昭和4年(1929年)生まれの80歳である。若い頃に福井空襲の火の海、福井震災の地獄、そしてその後の戦後の混乱の中から、デザイナーを目指して、東京の青山へ出かけていき、デザイナーの修業をされた。「価値の転換」は当時日常茶飯事であったであろう。日華化学工業、三谷商事、セーレン等地元有力企業の仕事、めがねの仕事、などを通して、デザイナーの地位向上に多大な貢献をされた。
デザインの価値は、驚くほど大きい。「ブランド」の価値がよく問題になるが、その元となるのは「デザインの力」である。「ブランド」は「デザイン」の結果と考えた方がよい。ものづくり産地・福井を発展させるのは「デザイン力」以外は考え難い。「デザイン」は知恵の塊である。「エチカルデザイン」を追求していくことで価値の転換が促進され、価格競争と脱却することが可能になる。福井における「新しいエチカルデザイン」の創生を高らかに歌いたいものである。福井県は人口割では「ものづくり大国」である。繊維、めがね、和紙、電子機器などの生産は人口割ではダントツの日本一である。そしてこれ等の産業は「デザイン力」によって質的転換をはかることが可能である。松山さんの「夢の仕事」を継ぐ若人の出現を待っている。

柱時計

平成21年4月23日
柱時計

私の子供の頃には、どこの家にも柱時計という振り子のついた時計が、家の中心にかかっていた。バネで動く時計なので、ラジオの時報にあわせて、時計調整をすると同時に、数日に1回、2つのネジ穴のネジをまく必要があった。チクタク、チクタクと動く時計は、夜の静寂の中で生きているかのようであった。その「振り子」についての話をしたい。
幼い頃この振り子を見つめていた記憶がある。振り子は正確に反復運動を繰り返している。振り子は振り切れることなく、必ずまた返ってくる。そしてその繰り返しである。これが私の幼児体験として残っている。即ち「振り子は必ず反復運動を繰り返す」というのは真理である。
私の学生時代就職試験の時1958年は「ナベ底景気」であった。就職先がなかった。しかし留年した友は一流企業に入った。景気が回復したのである。1973年第一次オイルショックが発生し、物価急騰、世の中が激変した。しかし2年で沈静化した。1979年第二次オイルショックが再度発生。1983〜87年円高不況、1991年バブル崩壊、2001年ITバブル崩壊、2008年金融危機と景気の谷を列記したが、谷底と谷底の間には、必ず高い山があった。それが時計の振り子と同じように好景気と不景気の両極端を往きつ、戻りつしているのである。
ところが人は特に経済評論家やマスコミの論調は、景気のよい時は「好景気は続く」という見方をする。逆に不景気の時は「不景気は3年続く」という。よく調べてみると、3年続く不景気は殆どない。不景気の中にも、景気の山が存在するのである。
人はある考えにとらわれる習性がある。時計の振り子が右へ動いている時はいつまでも右へ動き続ける錯覚を持つ。これは錯覚である。振り子は必ずまた戻ってくる。振り子が左へ動いている時は、逆にいつまでも左へ動くかのように考えてしまう。これ又錯覚である。間違いである。振り子は左から右へ方向転換をする。
名経営者や哲学者の至言はこの振り子の心理を見抜いた上での言葉が多い。「不景気の時は、好景気になった時のことを考えて、事前に手を打っておけ」「好景気の時は、いずれ来る不景気のことを思い、早目に、手を打っておけ」「好、不況に一喜一憂するな、永遠に続く好況も不況もない」「消費が冷え込んで売れなくて困ると考えるのはおかしい」「嵐は永久に続かない、楽観はしないが、悲観もしない」「さあ大変と慌てふためくな、冷静に、手早く対処せよ」「困難な時こそ新技術が生まれ、不況が去った時その技術が生きる」「勇気を出して挑戦せよ先の見えない不況はない。よく見て挑戦するのだ」「付和雷同するな、世間の動きは遅い」・・・
先人はみんな振り子の原理を見通している。私は柱時計の振り子のことを思い乍ら、永遠に続く不況も、永遠に続く好況もないことを忘れてはならないと肝に銘じている。

消費者庁への期待

平成21年4月22日
消費者庁への期待

明治以来かつてなかった発想のお役所、「消費者庁」が発足し、新たに同格で消費者庁を監視する「消費者委員会」が今国会で成立する見通しとなった。この組織共に、首相直轄の内閣府の外局として位置付けられた。
この組織は、日本人1億2千8百万人すべての為のものであり、しかも直接、間接に関係する重要な役所である。一部には二重行政ではないかという指摘もあるが、二重、三重になっても十分過ぎるという事のない分野の役所である。なぜなら、消費者は国民全体である為に、まとまった意見や提言、要求の機会がなく、何があっても泣き寝入りのケースが多かった。
今回の消費者庁の発足により、各省庁からの消費者の事故情報の提供が義務付けられ、同時に勧告や監視の権限を持つことになった。泣き寝入りしなくてよい状況が出来つつあり、国民の一人として誠に有難いことである。
消費者委員会の委員は僅かに10人、その内常勤は3人と少ない人数でのスタートとなる。消費者庁の監視と、首相への勧告という大きな責務を持っている。消費者庁の暴走を抑止する機能を備えた有識者の委員会を狙っているものと思われる。
消費者庁は各省庁のタテ割行政に対して、消費者の目線による「横串」をタテ割行政の中にさすもので、担当大臣の力量如何では、かなりの仕事が出来るものと思われる。
関連業界と各省庁の癒着が云々される中で、現在のネットワーク社会からの新しいニーズや問題を正確に把握し、行政府としての対応を速やかに実行していく為には「消費者庁」のような新設の組織が求められている。願わくばすくすくと育っていっていただきたいものである。

食料の保存

成21年4月21日
食料の保存
縄文時代から日本列島には大勢の人々が居住していた。山の幸、海の幸に恵まれており、気候も大陸や半島と比較すると、寒暖の差が少く、住みやすいところであった。食料も豊富にあり、木の実や魚の加工品が長期保存に適しており多くの人口を養うことが出来た。小魚は天日干により、また大きい魚は燻製にして、長期保存していた。発酵食の歴史は古く、縄文の頃より、日本列島から中国、ロシアの河川沿いにまで、生魚を土中に埋めて保存食とする習慣があった。人類以外の動物は生きるためにその時間の殆どを使っている。食料を確保するために使うのである。
日本は有史以来、急激な人口減少の経験のない、珍しい国である。その理由が「食料の豊かさ」にあるのは言を俟たない。そしてその豊かさは日本人の知恵と節食の妙、そして種々の保存食の開発に原因がある。
人類は早くから保存食を工夫し、多くの命を保持する知恵を身につけた。食料を無駄にせず、徹底的に食べきるようにするのが、生きながらえる知恵となるのであった。
弥生時代に稲作が伝えられ、米が生産されるようになると、定住が一般化し、高床式の倉が作られた。食料がもみのまま1年以上保存されるようになり、食料事情は一変した。カツオ節に象徴される乾物は、腐敗しやすい魚貝類を数年にわたって保存できる食料にかえた。漬物特に塩による漬物は、食品の保存期間を圧倒的に長くした。これによって日本列島は、人口増加に耐えうる豊かな国へと成長していったのである。
この食料の保存の知恵が、現代の食生活にまでつながり、生かされてきた。この永年に亘って引継がれてきた知恵を更に生かしながら、食料の長期保存、備蓄、そして最終的には、リサイクルまで昇華していきたいものである。

柴田神社

平成21年4月20日
柴田神社

織田信長の臣下第一といわれ、越前49万石という最大の領地をもらった柴田勝家は、福井市のJR福井駅から徒歩5分のところにある柴田神社に祀られている。柴田勝家は斯波氏の庶流柴田土佐守の子として、尾張で生まれ、その後信長の宿将として活躍。越前の朝倉家や一向一揆との戦いを制し、1575年9月(天正3年)城主となり、九重の天守閣を持つ北ノ庄城を現在の柴田神社所在地に建てた。
信長の死後、勝家は秀吉と対立したが、信長の妹「お市の方」と結婚し、北ノ庄城に住んだ。しかし秀吉の北陸攻めに敗れて、この北ノ庄城でお市の方と共に自刃。その時浅井長政との間に生まれた美人3姉妹(お茶々=豊臣秀吉側室、お初=京極高次正室、お江またはお江与=徳川秀忠正室)は戦火の中を秀吉方へ脱出。その後絶世の美女といわれた「お市の方」の遺児たちは戦乱の世を、敵・味方に分れて数奇な運命をたどることになった。
北ノ庄城は柴田勝家とお市の方の自刃の際に、灰燼と化したが、その故地に柴田神社が造営されていた。戦災や震災で神社の社殿は燃えてしまったが、平成9年に新たに着工。現在神域は少しずつ拡大されつつある。材料の木材は伊勢神宮の式年遷座の折、境内社の一社を払下げて頂いたとのこと。様式は室町時代の重要文化財、宇治市の三室戸寺の左奥にある「十八神社」をモデルとして建立したという。
福井の春祭りの一環として開かれた地元を知る講座「北の庄物語」を聞く機会があった。講師は中川一雄元敦賀セメント役員であり、久闊を叙した。中川さんは福井市歴史ボランティアグループ「語り部」としてお話しをいただいたが、自宅が柴田神社に近く、役をお勤めのようである。柴田勝家、お市の方の菩提寺は柴田神社とほど遠くない西光寺である。
柴田勝家末裔の人々は、日本美術院理事長、東京芸術大学学長、文化勲章受賞の平山郁夫画伯をはじめ兄弟の方々が折々に参拝されている。また福井市内の宗法寺住職柴田性紀さんも同じく子孫とのことであり、柴田勝家ゆかりの遺品も数多く残されている。私は以前から「戦国のエレジー四人の美女」を描くメロドラマの出現を期待して、女流作家を物色中である。

レアメタルのリサイクル

平成21年4月17日
レアメタルのリサイクル
レアメタルを回収するビジネスが広がっている。福井県敦賀市の日鉱敦賀リサイクル、秋田県大館市のエコ1リサイクル本社、DOWAホールディングス、埼玉県川口市のリユースビズテック(岐阜県中津川市に新工場建設)や、四国などの各地で、レアメタル回収ビジネスに乗り出すところが増えてきている。
福井県坂井市の日本エコカ工業でも、4年前からこの事業を開始している。ここでは自動車の手ばらしを行っており、車からとれるあらゆる素材を分解し、国内外に販売する事業を行っている。
つくばの独立行政法人「物質・材料研究機構」によれば、回収した金属類、特にレアメタルを、有効資源として再利用することは、日本の産業の土台を支える重要な仕事と位置付けている。
 ただ問題点はまだ多い。
まず第一は、世界的にも国内でも、金属のリサイクル市場が未成熟であり、価格が不安定なことである。現在のように世界同時不況がおきると、スクラップの価格は、大きく落込み、これを保護するセーフティネットはいまだ何もない状態である。
二つ目は、「手ばらし」作業が中心で、ペンチやドライバーなどの工具類を使う人海戦術が多く、効率はまだ低い。金属を抽出する方法や技術開発が必要である。
三つ目は、この新しい業界に対する研究機関や金融機関の支援体制が整っておらず、機械装置の開発、金属抽出の技術開発などの重要な研究が自前でしかやれないことである。
四つ目は、関連する大企業とのパイプがまだしっかりしておらず、長期的な視野に立った提携が、出来ていないのが残念である。
レアメタルのリサイクルは、将来大きな可能性を秘めた、重要なビジネスでありながら、これに気付く人の少ないのは誠に心細く、日本の持つ資源の見直しがすすまないのを憂いている。

エコ自動車への購入補助金

平成21年4月16日
エコ自動車への購入補助金

エコカーへの傾斜がすすんでいる。今年に入って新しいハイブリッドカーの発表が続いた。ホンダのインサイトとトヨタの新プリウスである。そしてこのエコカーの売上だけがぐんぐん伸びているという。地球温暖化防止にとっては朗報である。
また今回13年超の古い車を廃棄して新車を購入する場合は、普通乗用車25万円、軽自動車12.5万円、トラックバスなど40~180万円の補助金が支給されることとなった。4月10日以降実施中である。
更に新規購入の車についても、普通車10万円、軽5万円、トラックバスなど20〜90万円の支給がある。
4月1日からスタートした自動車税の減税措置と合わせると、かなりの大きな助成となる。冷え込んだユーザーの気持を、もう一度車に引き戻す、有力なキッカケとなるのは間違いない。
3月の日本の新車販売台数は、前年を大きく下回る25%減となった。これは4月1日より実施の減税措置や、4月10日より実施の購入補助金支給を見込んだ買い控えという見方もあろう。
同様の施策を実行したドイツの例によると、1月に導入し、2月には約2割増となったとのことである。日本もドイツも同じように、購入促進に貢献することを期待したい。
ハイブリッドカーを購入する場合を考えてみると、重量税の3年間減税・取得税の減税を併せると、今回の措置で200万円の車が諸税・諸費用込で180万円前後で取得できる。車種・下取車(年式)等により前後するので、正確な金額は、新車ディーラー窓口で相談するとよい。
いずれにしても思い切った内需拡大策であり、日本の産業の屋体骨を下支えする自動車業界にとっては、強力なバックアップ体制の出現ということがいえよう。
 

都市鉱山を掘り起こせ

平成21年4月15日
都市鉱山を掘り起こせ
日本のことを「黄金の国ジパング」といったのは、マルコポーロや宣教師たちであった。金箔や銀箔を利用する技術や、蒔絵や沈金・截金などの技法が発達し、金銀が豊富にあるように錯覚したことにも原因がある。それ以上に火山国であるので、噴火の際に地上に出てきたマグマが、急速に冷却し、各地で露出していることもあったと思われる。更に日本は当時から、人口も増え続け、都市が形成され、富の蓄積が進んでいたのである。
アメリカの博物館を訪れると、地下資源の世界中の分布が詳細に説明されている。日本の博物館では決して見ることがない。そこではアメリカがいかに多くの資源を有する国かを強調している。アメリカがいかに価値のある国であるかを知らせているようだ。
今世界中が資源の確保に血まなこになり出した。特にレアメタルと呼ばれる希少金属は、地球に存在する量が少ないとか、資源として利用しにくいとか、特定の国や地域に偏在しているとか問題が多い。例えばステンレス鋼を作るクロム、車の排気ガスの触媒に使うタングステン、強力な磁石に使うネオジム、電子部品に使うタンタル、金、銀その他スズ、アンチモン、インジウムなどがある。
つくばの「物質・材料研究機構」では、国内の家電製品や車から回収できる金属量(都市鉱山と呼ぶ)を試算し、発表している。そしてほとんどの金属は、地下に埋蔵されている量よりも、採掘して地上にある量の方が多いという。これは重大な指摘である。製品からこれ等のレアメタルを回収し必ずリサイクルして再利用しなければならないことを意味するのだ。リサイクル事業が最重要産業になることは間違いない事実なのである。
「物材研機構」の発表によれば、日本の都市鉱山の規模は、薄型テレビに必須のインジウムは世界全体の埋蔵量の61%、銀は22%、アンチモンは18%、金は16%、スズは11%、タンタルは10%に達する。まさに世界一の巨大都市鉱山なのである。
この他に、日本は資源のない国という自覚と、その保守性から、備蓄に励んでおり、製品化する前の材料の備えも多い。石油は、ほぼ1年分の在庫がある。こんな国は産油国も含めて、世界中に存在しない。

東京卒業

平成21年4月14日
東京卒業

面白い本がある。題名は「東京卒業」。編者は「山口県」著者は一般大衆。14年前に山口県が、朝日新聞に出したメッセージ広告に対する反響である。目的は「山口県のイメージアップとUターンの促進」であった。「東京に東京の良さがあるけれど、地方にも東京にない良さがある」「あなたにとって東京卒業とは?」との問いかけに対する熱い解答である。写真は山口県を代表する錦帯橋。そしてその広告の文章はすばらしい。ここに紹介しよう。

「東京卒業」・・・それは、東京が絶対だという価値観からの心の自由。
 単にUターンするだけでなく、意識の上で、
ふるさとの良さを見出してほしいとの呼びかけです。
一極集中のツケでしょうか。東京には人が根を張る土がない。
刺激はあるけど、うるおいがない。仕事はあるけど、ゆとりがない。
ストレスはあるけど、自分がない・・・。
「何でもある」は「何にもない」になりかねない。
ふるさとには、ふるさとの良さが何かあるはず。
自然とか、時間とか、広い家とか、肉親とか・・・だけじゃない何かが。
大都会のラッシュに揉まれているあなた。
大いなる田舎で都会を夢見ているあなた。
あなたにとって、「東京卒業」とは何でしょう。  ――――  山口県
                       
この広告に対する反響の中で、私を把えた人の言葉を伝えたい。
45歳の千葉在住山口出身者「インパクトのある広告ですね。山口出身の者としては東京に居住するすべての者の胸につきささる」。
45歳の長野県在住神奈川出身者「東京のザワザワ、ゴミゴミ、チマチマ、イライラ、ヘトヘトの生活を卒業したのは、長野県へUターンする夫を選んだ時でした」。
26歳神奈川在住出身者「自分たち若い人たちが、東京よりもっとすごい町並を作る楽しみが田舎にはあるようで、「東京卒業」賛成」。
山根基世NHKチーフアナ東京在住山口出身者「ふるさとは都会を漂流している者の灯台。いつかあの灯りの元に帰るのだと、心の拠り所にしているのです」。
古川薫、直木賞作家下関在住者「日本を離れてみれば東京も下関と並ぶ一都市。地方はまだ未完成の状態。広野の開拓に青春の血を燃やす」。
とても面白い企画である。Iターン、Uターンを真剣に考えている私達福井県民にとって、福井県の人口82万人の少いことを気にしている私達にとって、参考になる魅力的な企画である。「胸につきささる」程のインパクトのあるメッセージを多くの人々に伝えたい。福井での生活の魅力を、福井の自然の豊かさを、福井の美しさを、福井のおいしさを、福井の人々の温かさを伝えたいと真剣に思わせる一冊の本である。山口県が出版しているのがこれまた面白い。

日本の新車販売の動向

平成21年4月10日
日本の新車販売の動向
日本の新車販売は、3年前から低迷状態に入っていた。単月でも前年同月の販売(含軽自動車)を上回ったのはほとんど皆無である。
この国内の不振を、「弱い円」を利用して、海外市場へ輸出することで、糊塗してきたのが、アメリカのサブプライムローンの問題の表面化で、信用不安と景気後退が起きて、輸出にもブレーキがかかっている。
特にリーマンショック以来、国内市場も輸出と同様に大きな落込みとなった。昨年7月を最後の花火(前年同月比104%)として、8月以降急落。本年に入って前年同月比は80%、76%、75%と壊滅的な状態となった。
そしてまた長期的な傾向として、軽自動車販売の比率が上昇を続けており、昨年11月以降は40%を超え出して、全体の半分に近づく勢いである。これはガソリン価格の高騰が、2年間も続いたことが大きい。昨年後半より徐々に安くなってきているが、「ガソリンを節約しなければ」という意識がまだ残っている。そしてそれは「地球環境を守る」という責任と義務にも合致している。この傾向はすぐには消えないであろう。若者の車ばなれ、そして生活防衛の為の節約志向の表われも無視できない。
またハイブリッドカーへの移行が、国内だけでなく世界的にも急速に進んでいる。今売れているのは、ハイブリッドカーと燃費のよい車だけだといわれているほどだ。ハイブリッドカーへの補助金、重量税・取得税の減免の影響は、甚大となろう。自動車メーカー再編、新車販売ディーラーの明日をも、大きく左右する日が近い。
駐車場業界への影響は、新車販売台数回復が今年後半から期待できるが、それを待つまでもなく、真っ先に回復を始めている。昨年末より稼働率は上向いており、ガソリン価格の安値節約志向も加わり、フォローの風が吹きはじめたようである。私達の会社の駐車場(全国2,600ヶ所、約4万台)の3月の稼働率は、久しぶりに過去最高を更新した。

頑張れ

平成21年4月9日
頑張れ

芹沢光治良の「人間の運命」という大作を読んでいる。数奇な運命にもて遊ばれ乍なら、明治、大正、昭和の疾風怒涛の時代を生き抜いていく「森次郎」という青年の姿を描いている。旧制の沼津中学から一高、東大を卒業していく中で、数多くの少年、少女そして青年男女の人生が生き生きと表現され感動的なシーンが多い。
その中で必死に生きる若者達が帝大三年の時に文官試験を合格した時の模様が書かれている。文官試験は外交科・行政科にわかれていて、一高の仏法、独法、英法などの出身同志が合格を喜び合う場面があった。「日本が文明国の仲間入りをする為に、自信を持って頑張れ!頑張れとは一高生の語彙であり、一高生の精神である」。この「頑張れ」という一語が、第一高等学校の語彙であり、精神だというこの一行に驚いた。
思い返すと、私は学生時代から、「頑張れ!」という言葉を、常に自分に言い聞かせてきたように思う。その「頑張れ!」が一高生の語彙や精神だといわれると、困ってしまう。この「人間の運命」という大作は時代背景の描写も巧みで、登場人物も殆ど実名で描かれており優れた作品である。全6巻という大作で幼少からの人生のいろいろがつぶさに描かれ、久しぶりに感激させてもらった。しかし、この「頑張れ」という私にとって大切な一言を、一高の専売のようにいわれた点は、心にひっかかった。
「一所懸命に、一生懸命に、一心不乱に、集中して努力すること」を「頑張る」という。辞書には「奮闘する、頑強に主張する、元気を出してやり抜く」などある。国会議員の選挙の時など、投票日が近付くと「頑張ろう三唱をお願いします」といって全員で「頑張ろう」を三唱する。この不思議な一言が人間を前向きにする。悲観的になりがちな心を勇気づける。暗くなりがちな心を明るくする。私は自信をなくしそうな時、落込みそうな時、自分で自分を励ます時にこの言葉をよく使う。そしてこの一言の力を信じている。今、世界は、未曾有の困難の中にある。この事態を、この閉塞状態を突破する為にこそ、「頑張ろう」を三唱したいものである。

日本学について

平成21年4月8日
日本学について

白川静博士の「白川文字学」について研究したいと思い、県立図書館へ通っている。白川さんを知れば知るほどその研究のすばらしいことに驚嘆する。白川さんは数千年、数万年前に遡ると思われる象形文字から、漢字(殷字というべきか)への成長の跡をたどっている。そしてその研究を「文字学」という学問にまで昇華している。しかも殆ど独力である。他に類を見ない偉業である。県立図書館には白川文字学の為の一室がある。そこには著書がすべて閲覧できるようになっている。その著書の内容の精密さと、文字一つ一つに対する研究の深さを実体験できる貴重な空間である。
福井駅前東口からまっすぐ東方へ約1キロ余り、そして交差点を北へ100メートル余りいくと旧福井県立図書館がある。今はこども図書館のようになっているが、この建物にも「白川文字学」の分室を作るとのことである。白川博士は福井県の宝であり、名誉県民である。ただ惜しいのは、県立図書館もこの分室も交通の便が至って悪い。福井県民でも車なしでは訪れることは難しい。
そこで遺族の方々に福井えきまえに「白川文字学」の分室の分室を作ることを提案している。私は白川文字学は本家の中国にも存在しない世界的な偉大な研究であると考えている。日本は今、世界の中の一員として、その存在感を高めているが、「言語力」が弱いといわれている。しかし私達の使っている日本語は「漢字」である。「漢字」は世界一の言語である。人類約60億人の内、20億人以上の人々の言語の元になっている。
「日本学」という言葉もまだ正式に広く認められてはいない。この言葉の定義を考えている私は、「日本学」の出発点、原点は「白川文字学」にありと確信しだしている。日本という国を歴史的、風土的、文化的に種々研究していくと、中国大陸や朝鮮半島を通して世界とつながっていたことに容易にたどりつく。そして世界の人や文物が日本へ渡来し、そこで発酵し、独自の発展を遂げたことに気がつく。この日本独特の思想を「日本学」の領域にまで高めたいと考えている。その出発点が白川文字学である。日本学の係累をたどってみると歴史上には細々とその姿が垣間見える。しかし、これを系統立てて日本学にまで高めていくことは容易ではない。白川さんの白川文字学の手法を参考に、日本学を考えてみたい。日本学の確立には今はじめたとしても数十年、数百年が必要であろう。私は白川さんゆかりの福井が、日本文化のふるさと福井が、日本海側中心の福井が、日本学研究拠点として最適だと思う。その足がかりという意味で、福井えきまえに「白川文字学」の研究室をと愚考している。

常識を疑う

平成21年4月7日
常識を疑う

年金問題が大変になってきた。少子高齢化時代を迎えて、将来の年金基金が確保できるかどうか心配になってきたという。日本の年金は大丈夫だろうか。若い年齢層の人達は危機感を持っている。国も十分な説明をしていない。問題点が明確にならない中での先行きの不安ばかりが宣伝される。「年金は将来破綻する」ということが常識化しつつある。
私はこの常識になりつつある傾向を疑っている。本当に年金制度は危いのだろうか。問題点は多い。まず問題点を列記してみよう。
1.官公庁職員の年金、厚生年金、国民年金の制度に差がありすぎる。
2.徴収方法が弱い。それぞれがバラバラの方法で徴収しているので不払いが起きやすい。
3.支給方法がバラバラで支給漏れ等が簡単に起きてしまう。自己申告制というのもうなづけない。
4.基金の運用下手。日本経済の成長率を上回る利子配当が積み上るのが当然であるが、なぜか無駄 使いが多く、基金の増加が少い。
5.高齢化の進行により、受給者が急増すると思われるので、負担できるかどうかが心配。
6.制度上の欠缺がある。受給を受けながら働く人に対する感謝のシステム、優遇システムがないので、働ける人も働かずに年金に頼ってしまう。
これ等の問題を解決する方法は、そんなに難しいことではない。至極当然のことを、時間をかけて解決していけばよいのである。その時の取るべき基本姿勢は日本の国民への信頼と愛情である。
1.年金制度は30年かけて一本化すべきである。掛金にある程度相応した受給額に近づけること。
2.徴収方法は税金と同様にすべきである。年金の負担は国民の義務である。
3.支給方法は統一すべきである。受給は国民の権利である。
4.基金運用は外部のプロに請負わせて、競争させる。保険をかけ、監査を厳 しく行うのは当然である。10社ぐらいに分散投資するのが安全。
5.高齢化対策は当然必要であり、80歳以降は漸減するシステムがよい。
6.働いている人を優遇する制度に切り替えるとよい。80歳迄は現役で働くことが可能である。
何事も常識と思うと疑えないが、それも現状を分析してみると案外間違っていることが多い。「常識を疑う」習慣をつけると、人は成長する。

こしの国の都


平成21年4月6日
こしの国の都

越前に五山あり。日野山(越前富士)、越智山、文殊山、吉野が嶽、部子山である。日野山周辺にある日野神社は、すべて継体天皇を祀る神社である。中平吹、荒谷、向新保、常久にある。日野山の「日」の名は「日の御子」の「日」に通じ、同時に「火」に通じる。製鉄業が行われていたことと強いかかわりを表わすものであろう。百済から日本海(当時は北つ海といった)をこえて三国、河野、敦賀の津へ続く海の道を通って「製鉄の技術」が早くから伝えられていたと思われる。
継体天皇の御代にはまだ記録する文字が十分でなく、歴史の真実は、古墳の発掘を待たねばならない。ところが大和は早くから開発がすすみ、発見や発掘がすすんできていた。「こしの都」の越前は、北陸高速道の工事により、次々と貴重な発見があり、今後の発掘に大きな期待がかかる。今迄発見された古墳群の分布を見ても、越前三川を中心とした扇状地の高所に密集しており、巨大前方後円墳の数多くの存在は「こしの都」を十分証明するものである。更に学術的な発掘や探求がすすむことを期待したい。
古事記によれば、越の国を「遠々し高志の国」とよんでいる。万葉集には「科離る越」「み雪降る越」とうたわれている。律令時代には北陸道は、若狭、越前、加賀、能登、越中、越後、佐渡の七ヶ国を含み、越前の国司が、各管内国司の治績を調査監督指揮する権限を持ち、道内唯一の大国であった。
織田信長の祖先ゆかりの織田町剱神社には神護景雲5年(770年)の梵鐘がある。国宝である。その銘文に「剱御子寺」と書かれている。そして境内から瓦が出土した。神宮寺の遺跡である。日本最古の神宮寺は宇佐八幡宮の弥勒寺といわれていたが、剱御子寺の方が古い。また敦賀の気比神宮の伝承によれば藤原武智麻呂が715年に神宮寺を建てたとの伝記がある。これが事実とすればこれまた宇佐八幡宮の神宮寺よりも少し古い。いずれにしても北九州と越前は古代より、日本の先進地域であったので、その事実を伝える事蹟である。こしの国は、「匠の都」といわれるほど、中国や朝鮮半島よりの文物の交流、人との交流が長い期間続いた。これは、地の利、水利のせいである。大和の比ではない。
和紙、漆器、陶磁器、鉄器、木工、織物、染色など、匠の技といわれる産業が越の国に根付き、しかも脈々と受け継がれて、今日まで続いているのは、特筆すべき事実である。
最後に音曲についても、田楽や神楽が各地に残っている。越前万歳は、国指定重要無形民族文化財の指定を受けている。三河や尾張、伊勢、伊予、秋田万歳よりも古い歴史を持ち、これまた現在に伝承され、生活の中に生き続けている。

こしの国の都 

平成21年4月3日
こしの国の都 

京都は千年の都といわれ、約1200年前に平安京が造られた。奈良は1300年前の都であった。ところが若狭から越前にかけて「こしのくに」があり、その都が九頭竜川、足羽川、日野川の三大河川を含む現在の福井市周辺から越前市にかけての広大な領域にあった。今から遡ること約1500年以上前である。継体天皇を育んだ「越のくに」である。神代には「高志の国」といった。その後「道の口の国」と呼ばれ、更にくだって西暦691年に「越前の国」となった。約1300年前ごろである。越前の国から、718年に能登の国が分かれ、更に824年に加賀の国が分かれた。日本海側では越前の国のみが大国といわれていた。
こしの都千五百年物語を聞く機会があった。福井のキラリ会の3月例会のスピーカーに「こしの都文化事業実行委員会会長の三田村紘二氏」を迎えて、歓談の一夕を持ったのである。そこで「こしの国の都」がいかにすばらしいかを再認識することが出来た。資料から抜粋してみよう。
弥生時代から日本海沿岸は、日本文化の先進地帯であった。中国は前漢、新、後漢の時代があったが、その新の時代の王莽が作った銅貨(貨泉)は日本海沿岸各地で見つかっている。すでに弥生時代に中国と日本海沿岸地帯は交流が存在していたのである。また各地に鉄をつくる鍛冶炉跡や多くの鉄製品が見つか
っている。鉄の文化は日本海沿岸から始まっているのである。日本書紀の垂仁天皇二年の条に書かれているのは、「崇神天皇の代に意富加羅国(おほからのくに)の王子、都怒我阿羅斯等(つぬがあらしと)が日本海をこえて、敦賀にきた」と伝えている。おお加羅国と
は、大邱市から釜山にかけての地域の中の一番大きい国である。その王子の名が「敦賀」の名となり、その子孫は今も福井に住んでおられる。
継体天皇母、振媛は、越前すなわち三国(坂井市)の出身である。日本書紀に登場する女性の中で、この振媛の美貌が最高位に賞でられている程の美人であった。三国の地は越の国の都を縦横に結ぶ三大河川の扇のかなめの地であり、かつては大きな潟を形成していたと思われる。九頭竜川を遡ると数多くの前方後円墳がある古墳群に達する。そこに二本松山古墳がある。私の住む山である。ここから銀製の冠、金銅製の冠が出土した。この山はまだ十分な調査が行われていないが、重大な発見が期待される山だと私は予測している。若狭町の十善の森古墳や、継体天皇の父、彦主人王ゆかりの滋賀県高島市の鴨稲荷山古墳からも冠が出土している。大和ではこの時代冠の出土はなく、6世紀後半の藤の木古墳の出土の金銅冠を最後とする。
朝鮮半島から、こしの国、そして大和へと続く「冠の道」を思わせる数百年にわたっての交流の証が、出土されてくる「冠」である。

発想の転換

成21年4月2日
発想の転換

敗戦後64年が経過しようとしている。資源もない、資金もない、設備もない、家もない、工場もないという「ないない尽くしの日本」が、世界中の支援を受けながら、世界の工場として「輸出立国」という金看板を掲げ、遮二無二走ってきた64年間であった。気がついたら世界の列強の位置から転落していた筈の日本が、またまたトップグループにいる。そして相も変らず「輸出依存」の体質である。
そろそろ発想の転換を図る必要がある。個人金融資産1,400兆円もの巨大なストックを有する国は、地球上に存在しない。日本だけである。そしてその金融資産を消費する人は少ない。その資産を増やす努力をする人も少ない。ただ死蔵しているだけである。自然増が少ないので消費を切りつめる人が多い。内需拡大が進まない理由がここにある。
もう一つ内需拡大の障害がある。それはインフラコストが世界一高いことである。インフラコストが高いと、経済は活性化しない。インフラコストを安くすれば、国内経済は直ちに活発に動き出す。まず今回第一弾の政策として「高速道路千円乗り放題」が実施された。これはJRや私鉄、航空会社、バス会社の料金体系に革新的な影響を与えることであろう。即ちホリディ料金の新設が相次ぐ筈である。そしてホリディーライフが大きく変るであろう。人々の行動は活性化し、経済効果ははかり知れない。
やるべきことは更に地方のインフラ整備である。地方には魅力が一杯ある。固有の魅力である。そこに人々は集まってくる。国内だけでなく、海外の観光客も激増する。
今回の「高速道路千円乗り放題」は起死回生の大ホームランである。これで日本の内需拡大が始まる。これで世界の期待にこたえられる。GDP約600兆円の日本が年率5%で成長するようになれば、年間30兆の真水の経済波及効果がある。今やアメリカにとって代れるだけのボリュームである。年率5%は決して高くはない。投資先も日本海ベルト地帯が残っている。グリーンエネルギー投資もこれからだ。エコカー投資についても日本は先頭を走っている。発想を転換し、内需拡大策を次々と打ち出す道をとってほしいものである。

千円乗り放題

平成21年4月1日
千円乗り放題

高速道路通行料が、祝祭日、土曜日、日曜日に限り、上限千円となった。それ以外の日も3割引である。3月28日の土曜日から実施となった。私はこの政策が発表になって以来、高速道路(主として北陸自動車道から東名神)を利用するたびに、サービスエリアで聞きとり調査を行ってきた。調査項目は1.いつから実施されるのか。2.最近の客数の変化はどうか。3.何か問題はないのか、の三点である。
今年の年初には誰もが「まだ何の通達もなく、判らない」という頼りない返事が多かった。サービスエリアは人影も車もまばらで、世の中の景気を素直に反映し、閑散としていた。ところが最近では、少しずつ変化が出てきた。ETC端末が売れ出した。すぐ売り切れとなった。ここ1〜2週間ほどは、天候の回復も影響したのか。3月末の期末のせいか、日に日に客数が増えだした。そして3月28日の実施当日は、各地で通常の2倍近い利用者となった。
この政策が発表以来、「これこそが何よりの景気対策である」と私は主張してきた。「山のあなたの空遠く、幸いすむと人のいう」という歌の通り、人は「山のあなた」にあこがれるのを常とする。日本の県境は殆どが山脈であることが多い。その山の向こうにあこがれるのが、日本人の特質なのである。この政策は時限立法という前提であるが、これ程のすばらしい政策を時限立法で終らせてはならない。大変大きな波及効果をもたらす政策である。内需拡大の要請は、世界中から寄せられているが、この政策こそ、内需拡大の最大且つ最良の切り札である。これにより地方は元気づくであろう。観光地は息を吹き返すであろう。そして日本人の顔が明るくなることであろう。私は久しぶりに経営姿勢を元に戻し、強気の、攻めの経営を取るよう取締役会で発言した。