医療、介護、福祉、ボランティア活動の複合コンプレックス

平成21年7月27日
医療、介護、福祉、ボランティア活動の複合コンプレックス

少子高齢化がどんどん進み、日本は先進国の中で、最も老人比率が急激に増加しつつある。老人社会の到来である。2050年頃にピークが来るとの予想もある。現在年間100万人が死亡しているが、ピーク時には年間170万人が死ぬと思われる。現在の死亡率は0.8%であるが、それが1.7%〜2.0%にまで上昇するのである。「死」がだんだん身近なものになっていく社会が到来する。病気や死に対する考え方が根本的に変わると思われる。
医療費の増加が問題になってきている。GDPに占める割合が毎年増え続けているのだ。政府は健康保険制度を維持するために、負担を国民に求める方法を取っているが、それでは解決にならない。医療費が減少する方法を見つけなければならない。
健康維持は国民の義務である。元気で長生きしている超高齢者に話しを聞くと、殆どの人達は「薬をのんだことがない」とか「医者にかかったことがない」という。身体を使い、大きな声で話し、自分の健康は自分で守るという気概を感じる。他人事ではなく、他人まかせにはしていない。
現在の日本の医療現場はどうであろうか。大病院は数多くの老人で溢れている。みんな薬づけである。一日に数種類の薬を飲んでいる。薬と薬が反作用を起こさないのかと、他人事ながら心配である。市中の医院でも同様のことが起きている。2050年頃には、これ等の事が実現不可能になっていくと思われる。経済的な面と、精神面の双方からこの状態が不可能になるであろう。
老々介護の深刻さ、悲惨さは体験しないとわからないといわれている。60歳台の社員が90歳の両親を1人で看病、介護している。また65歳の社員は60歳の時に、一時退社して「父の看病に専念したい」と言った。父親の死後また復職しているが、現実はどんどん厳しさを増している。
巨大病院を作るのでなく、医療と介護そしてそれを支える福祉やボランティア活動の基地となる複合コンプレックスを作ったらいかがであろうか。私はそんな理想的な施設があることを教えられた。それは自治医大OB達が全国各地で繰り広げている新しい医療活動である。「病気を治す医師でなく、元気をつくる医師になりたい」という理想に燃えた集団である。その施設の一つである滋賀県米原市の「地域包括ケアセンターいぶき」のセンター長畑野秀樹先生の話を聞いた。あまりにすばらしい話なので、早速アポをとり、近々中に現地を見学させてもらうことにした。今後の日本はもちろんのこと、高齢化がすすむ先進国はおろか、世界中でこの方式を取り入れていくことになるのではなかろうかと思われるので、詳細に亘って調査を続けたいと考えている。
米原市は2005年2月、平成の大合併の1つとして伊吹町、山東町、米原町が合併して誕生した。人口約4万人。高齢化率25%。伊吹町の北部では50%をこえるところもある。「地域包括ケアセンターいぶき」が出来たのは2006年。米原市の公設施設として出発、社団法人地域医療振興協会が管理運営を行っている。医療福祉の拠点としての「いぶき」の他に、4ヶ所の外来診療、出張所診療所を持ち、訪問診療、訪問看護、居宅支援、ディケア、老健(介護老人保健施設)リハビリの複合施設である。現状医師4名、研修医数名、看護士、介護士、リハビリ指導員その他スタッフ総勢60名である。包括センターの中で老健施設の利用定員は入所者60名(内ショートステー30名)通所者一日約20名。診療所は無人のところも含まれており、医師と患者の信頼関係は非常に強いと思われる。
老健はフォローしている高齢者260名、これをセンターと社会福祉協議会のスタッフ、ケアマネージャ達と毎月1回打合せ会を開き、個々人の情報交換を行っている。老健は30日以内に自宅へ帰すことを決めており、ショートステーは15日まで。目的は病院から「在宅に帰す」ことである。リハビリに力を入れているのは、老人も期限までに家に帰りたいと考え、努力するから相乗効果が期待できるからである。理念は「地域支援」を行うのである。
研修医の受入れも積極的に行われており、滋賀医大、長浜日赤、長浜市民病院をはじめ都会の病院からの研修医も多い。将来は生老病死の内の「生」の部分即ち「保育事業」をこの施設の中に作りたいとのこと、理想追求はまだまだ広がりつつあるのを感じた。
世の中が求めている仕事、誰かがやらなければならない仕事、それを黙々とやり続ける人々がいることに感動した。この方式が更に磨き上げられて、世に広がっていくことを願っている。

投稿者: jsb 日時: 2009年07月27日 09:00

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