創業者ブログ

平成21年7月28日
成長の限界
ローマクラブの科学者達が「成長の限界」を発表し、このままでは人類は100年以内に破滅の時を迎えると予言したのは1972年、昭和47年のことであった。その1年後第1次オイルショックが世界を揺るがせた。その当時の世界の人口は36億人（1970年）であった。人口爆発、工業生産や資源消費の暴走、食料や水資源不足を想定し、地球環境の破壊がすすみ、人類の滅亡を予言したのである。
2009年現在、世界の人口は予測の通り69億人に近づき、資源の奪い合いが表面化し、地球温暖化に対する関心は日に日に高まっている。ローマクラブが予言した地球破滅の日は「2070年」である。その予言は今のところ見事にあたっているとしか言いようがない。その日まであと61年間しか残されていない。今年5月に生まれた私の内孫の宗司と歩美は、生涯を全うすることが出来るのであろうか。誠に心配な「人類の未来」である。
人生の終盤にさしかかって、やり残した仕事を考える時、私は私のテーマを「2050マイナス80」とすることにした。
「先進国は2050年までに、2000年の温暖化ガス排出をマイナス80％とすること」を推進する仕事をしようと考えたのである。わかり易い目標に言い換えると、「エネルギー消費を5分の1にする運動」に命を捧げようと思っているのだ。
「エネルギー消費80％カット」の第1段ロケットは、コンパクトシティの建設である。現在福井県の県都、福井市の中心部に、私達は3棟のマンションを建設中である。1棟は今春完成、入居が始まっている。200年住宅構想を先取りした免震構造マンションである。北陸3県では初のケースである。後2棟は、年末から来春にかけて完成する。3棟あわせると180所帯以上の都心居住実現を目指している。都心居住が進めば、エネルギー消費は大幅にカットされるのである。
地下資源を乱掘しだしてから、まだ100年程度であるが、地上にある製品化された資源と、地下に残っている資源を比較すると、地上の資源（都市鉱山と呼んでいる）の方が多くなりつつある。このリサイクルに注力し、再利用を行うべくリサイクル事業（車、木材、その他）を行っている。この事業の社会的価値は今後飛躍的に増えると信じている。今はまだ利益を生まない分野であるが、後10年で採算的にもあうようになるであろう。リサイクルが第2段ロケットである。
第3段ロケットは、電器メーカーの開発した各種省エネ機器の積極的な採用である。LED照明、太陽光発電パネル、小型風力発電機、省エネ蛍光灯などを率先して社内外で使用している。その採用の目安は、省エネの可能性80％カットの成否である。夜間電力使用のエコキュートも採用している。
第4段目のロケットは省エネカーである。車である。究極は軽い柔かい電動モーターで走る自動車を想定している。現在は自動車の駐車場におけるプラグインの充電施設の研究に着手している。電動自動車は電池の重量が重過ぎるので、可能性が低いという意見があるが、車を運転して100ｋｍ走り、そこで急速充電をしてまた走るシステムが一般化すれば悪くはない。要は電池の重量をいかに軽くし、性能を上げるか、急速充電機の性能をいかに上げるにかかっている。電気自動車の動力装置は軽量である。成功の可能性は決して低くはない。車体は鉄板でなく、ハニカム構造の新素材がよいと考えている。軽くて、柔かいものがよい。新しいタイプの電動車はここ3年程で市場を席捲すると信じている。トヨタのハイブリッドカーが、今世界中で注目され、大ヒットしているが、3年前にこの状態を予想した人は少い。電動車もまた然りである。全く新しいメーカーが誕生するかもしれない。電動車のエネルギー効率は、夜間電力を中心に使用すると10分の1くらいまで節約できそうである。
第5段目のロケットは「節約」である。今迄のエネルギー多消費型の経済体制を脱却し、新しい価値観や倫理観に基づいた省資源省エネルギー型の社会体制を築いていく必要がある。私達は付加価値の最大化を求めつつ「節約」を旨とし、近江商人道の「算用と始末」を忘れない経営を指向している。前期の期首の経費を期末のそれと比較すると、3分の2に縮小することが出来た。付加価値は逆に増加しているので、「節約」「始末」とも、徹底して実行できたと考えている。これは終りでなく、始まりである。「節約と始末」の効用を侮ってはならない。