2009年02月のアーカイブ

日本の株式暴落の原因

平成21年2月26日
日本の株式暴落の原因

日本のバブル崩壊が始まった1990年以後、日本の株式(日経平均)は失われた十年〜十五年を経過して今なお最低水準に落ち込んでいる。小泉元首相が登場した時の日経平均は20,000円、現在は7,400円と回復の兆しは見られない。
アメリカの現状は「金融工学システムの花」といわれた「投資銀行」が昨年一年間にすべて消滅した。ベアスターンズの破綻に始まり、リーマンブラザーズの倒産、ゴールドマンサックス、モルガンスタンレーの銀行持株会社への移行、メリルリンチのバンカメへの吸収と全滅した。これはバブル崩壊で日本の長期信用銀行がすべて姿を消したのと全く同じ形である。
今回の日本の株式暴落については、私達はもう少し冷静になる必要がある。その暴落の原因が実体を反映したものではないからである。世界中を見渡すと、今回のサブプライムローン問題で直接的に大きな影響を受けていない国は、日本だけである。通貨面で見ても日本円の強さが光っている。そこで世界の目が日本円に注がれて円高を演出している。今迄新興国や産油国に集まっていた投機マネーが、安定度の高い日本円に集まってきているのである。円高は、国際株といわれるトヨタ、キャノン、ソニーなどの株式の売却を引き起こし、次々と安値を更新していっている。
トヨタ、キャノン、ソニーをはじめ自動車産業、機械産業、電気産業の実体はいかがであろうか。中身はアメリカの急激な需要減を見越して、在庫調整に動き出す企業が後を絶たない。業績は一時的に急落し、雇用も不安定になりつつあり、失業率も増大するであろう。しかし、円高による為替差損と、株式暴落による株式評価損が大きいことに注目をしておく必要がある。優良企業は強かに先手先手と対策を打っているのである。
現在の日本の株式市場は、正当に評価されていない。「根拠のない崩落」というエコノミストもいる通り、日本の優良株はその実体より遥かに低い位置に放置されている。例えば日立の株価は純資産の0.37倍、ソニーもNECも0.46倍、パナソニックも0.60倍、トヨタも新日鉄も0.81倍と解散価格を遥かに下回っている。株式市場のあまりの暴落のせいで、下振れしすぎた株価は国際優良株を中心に早晩回復してくるのは間違いないものと思われる。

余所者

平成21年2月25日
余所者

余所者とは他の土地から来た人を指す言葉である。日本は長い間人間の移住について強い制限が課せられていたせいで、地方では余所者が少ない。転勤族を含めても本当に僅かの人数である。しかし人数は少ないが、その目は鋭く、批判精神に富み、発言力も強い。土地の人には見えないものを見抜く力を備えている。
外国に住んでみると、日本のことがよくわかるという。視点を変えると、本質にせまることができる。私の会社には福井出身の者が多い。全国各地の支店で働いている。「福井」について彼等からいろんなアドバイスを受けることがある。福井を離れているから、福井のことがよくわかると思うからだ。
福井で余所者の会「キラリ会」をネッツトヨタの多田伸社長等と結成して早や1年半が過ぎた。転勤族を中心に、毎月会合を持っている。福井の歴史文化、伝統工芸、名産品、風光地などを紹介してくれるスピーカーを地元の方々にお願いしている。卓話のあと質疑応答そして全員の近況報告で終る。福井に対する熱い思いや痛烈な批判が飛び出すことがある。
福井で過した数年間をあとで振り返ってみて、自分の人生の中ですばらしい一ページとなるよう、「キラリ」と光る思い出の年月となるよう精一杯努力しようという趣旨の会である。メンバーは多士済々、毎月話題提供のスピーカーも多士済々、みんなが和気藹々とテーブルをはさんで2~3時間歓談する機会は誠に貴重である。
今月のスピーカーは女性の小説家の「築山桂さん」である。NHKの土曜時代劇「浪花の華――緒方洪庵事件帳」の原作者である。京都出身、福井在住である。舞台は大阪の町、四天王寺界隈。聖徳太子の時代から四天王寺に伝わる雅楽の一統と緒方洪庵を主役にした手に汗にぎるサスペンスを繰り広げてくれる。私は偶然この四天王寺で毎年演奏をしている楽人の一人、平安雅楽会のリーダー白井英次さんと幼なじみである。今は京都の天津神社の宮司をされている。現在では雅楽の主力が東京の皇居周辺へ東上し、後継者難である。東京芸大でも邦楽系の人気は高くないという。緒方洪庵の適塾には橋本左内が入門。種痘の父笠原白翁から洪庵への種痘提供の書も残っており、洪庵は福井にとり何かと興味をひく存在である。

地震

平成21年2月24日
地震

日本の国土の面積は、世界の陸地の400分の1を占めている。陸地の0.25%である。経済水域対地球表面積は0.75%となるがこれまた僅少である。しかし世界中で起きる地震の約10%は日本周辺で起きている。その理由は4つのプレートに別れた複雑な地域にあり、フィリピン海プレート、太平洋プレート、北米プレート、ユーラシアプレートの接点に日本がある。
日本は6,852個もの小島が集まっている島嶼国家である。国土全体に火山が分布し、火山列島である。その為、日本は世界有数の地震国である。そして福井もその例外ではない。
福井地震から60年を経過し、今年の私達のフェニックス研究会は「防災まちづくり」にテーマを絞り、地震への備えを念頭においたものにしていきたいと思っている。毎回中身の濃い講演と熱心な質疑応答があり、有意義な一時となっている。
今月は福井高専の吉田雅穂工学博士の講演を聞いた後、グループに分かれて意見交換を行った。地震による死因は火災、水死、圧死であり、殆どが建物の中で死んでいる。死なないためには耐震性の高い建物に住み、予備知識を学び、準備を怠らないことである。
地震の特徴は同じ所で同じことが起きる、即ち繰り返し現象である。子孫のために安全で安心できる耐震構造の建物に住むことを提案したい。地震と同時に発生する火災、水害などにも強い建物にしておきたい。また大雪の対応も必要である。避難経路、弱者の確認(どこに救助の必要な方々がいるのかを事前に把んでおくとよい)、備蓄の必要性(水、食料、ラジオ、懐中電灯、ライター、衣類など)、準備をしておけば安心である。
耐震診断の無料化とその耐震レベルの表示、そして耐震工事を実行する為の診断結果の表示(ABCランク)とランク別補助金制度の採用などの提案があった。地震発生後の公費投入は高くつく。予防のための公費投入は非常に安くつくことを忘れてはならない。兵庫県南部地震の被害額13兆円とのこと。東南海地震+南海地震が同時に起きた時の中央防災会議(2003.9.13)の被害額の予想は38兆円〜57兆円と想定している。

世界一高い日本の給料

平成21年2月20日
世界一高い日本の給料

59歳で創業した1996年頃の状態は、前年の1995年に1ドルが80円台まで急騰し、輸出産業にショックを与えていた。当時の日本人労働者の平均賃金が約26万円/月とすると、アメリカは1600ドル/月といわれていた。アメリカの2倍の給料を日本はもらっていたのである。
しかしながら日本人は世界一高い(人口500万人以下の小国を除く)給料をもらい乍ら、それに満足している人はいなかった。現在円高が大問題になっているが、15年前の状態と比較してみると、全く驚くに足らない。アメリカと日本の給与格差は更に広がっている。しかるに日本人の高給に言及する人の何と少ないことか。中国やベトナム、インドなどとの給料の差は更に激しい。どこに問題があるのかを考えてみよう。まず日本人社会の持つ自虐性が第一である。日本人が世界一であるはずがないという固定観念から抜け出せていない。二つ目は経済構造、特に流通に問題がある。運賃が高すぎる。流通段階が多すぎる。流通マージンが高すぎる等々。三つ目は規制である。これは規制緩和が叫ばれ、徐々に解決に向いつつある。賢明な日本の官僚の力に期待したい。ところが最も大切な点は実は私達の「心の問題」なのである。世界一の給料をもらい乍ら、それに満足できない「心」の存在を忘れてはならない。
現在地球上で戦争や小競り合いで毎日多くの人が殺されている。そしてアフリカ大陸では数百万人が毎年飢餓で死んでいる。衣食住が足りている日本、健康保険制度、年金保険制度、生活保護制度、自治会町内会商店街組合等の仲間の互助制度などどれをとっても世界に冠たる優れた仕組が出来上がっている。勿論これ等の仕組の間からこぼれ落ちた人々は多い。しかし世界の悲惨な状況と比較すると不平不満を言っていてはいけない。個々のケースで速やかに対応し救済策を打ち出していく必要がある。例えばアメリカと比較しても貧困層の少ないことでは日本ははるかに優れている。
世界一高い給料をもらい乍ら、なぜ私達は「満足」が得られないのであろうか。老子の言葉に「知足不辱、知止不殆」がある。「足るを知る」ことがいかに大事かを教える言葉である。寺院や茶庭で丸い「つくばい」の真中に口と書いたものある。まわりに五、隹、 、矢が添えてある。吾、唯、足、知と読む。「足るを知る」ことが人生の修業である。「足るを知る」ことが生活の根本になければならない。「足るを知らない」生き方は餓鬼根性である。足るを知れば、自然に生まれてくるのが「利他の心」、「共生の心」である。「利他の心、共生の心」を大切に、日々を生きていきたい。 

医師という聖職

平成21年2月19日
医師という聖職

講演会の講師を頼まれることがある。学校の先生方を前に話す機会があり、面映い中をあえて苦言を呈することがある。私の拙い人生の中で恩師と呼ぶ教師の何と多いことかを説く。恩師と呼べるのは人生の師であり、厳父のような師であり、愛情を内に秘めた師であると説く。教師は聖職だと説く。
医師の友人が多い。最近は医師も専門分野が細分化されてきているが、開業医の場合は反対に、ひとりでに広い分野を対象とせざるを得ないようである。医師は時に人生の教師としての役目も持つことになる。医術は仁術といわれて久しいが、医術を習得するのに大学、大学院、インターン等を通算して7〜8年更に医師試験の期間を合わせると7〜10年を要することになる。
ミシガン大学の大学院の寮で隣室の日本人医師と親しく半年間を過したが、彼は酒もタバコものまない。脳神経外科であるので「手が命」だからという。まさに自分の手が「神の手」になっているのである。医師の友人には、このような人物が多い。医師が聖職であることを十分理解し、尊い人生を送っているのに感銘を受けることが多い。
世間は不況というのでテレビも新聞も暗いニュースばかりである。高速道路もレストランも百貨店もホテルも人影がまばらで寂しい限りである。人々は保身に走り、財布のヒモをしっかりしめ出している。明るいニュースがないのかと報道関係者や評論家の友人に声をかけてみるが瞠目するほどのものはないという。
4,5人の医師の友人を訪ねてみた。そして驚いたことにどの病院もどの医院も患者で一杯である。不景気は全く関係がない。インフルエンザのせいか、心の病いのせいか、高齢者が多くなったせいかとに角患者の多いのに驚いた。先生とあって話しをする暇もない程忙しい。毎日の貴重な時間を、先生自ら診療にあたっておられる姿を見て、本当に頭の下る思いがした。
医師や教師が聖職といわれる理由は、毎日の生活を、患者や学生、生徒の為に捧げているからであることに気付かされた。産婦人科医師の不足がいわれているが、少子高齢化時代の解決手段として産婦人科医師の枠を広げるとのことである。当然のことであるが、同時に激務に喘ぐ医師の状態に、心から感謝することを忘れてはなるまい。

福井の水

平成21年2月18日
福井の水

日本は地球の未来の生殺与奪の権を持っているといえば、人は笑うであろうか。実はこれは正しいのである。国土の広さはロシア、軍事力はアメリカ、人口は中国(いずれインド)、言語力で英米(いずれ中国)、経済力でアメリカが世界一を誇っている。日本の出る幕はない。
21世紀は今までとは全く異なった地球となるであろう。国土の広さはマイナスに働き、軍事力の大きさも同じマイナス効果となる。経済力や言語力は世界中での均質化がすすむであろう。
そこで問題になってくるのは、環境・エネルギー・食料に関するものである。そして環境・エネルギー・食料の新技術開発のための知恵が求められてくる。直近の100年の僅かな期間に、私達は地球のあらゆる資源を使いすぎてしまった。もう石油もガスも石炭も森林も食料も残り僅々100年であろう。
この残された貴重な資源を全く使わないで、人類を救う工夫が今必要なのである。その知恵が求められている。その知恵を持っているのが日本人である。その技術を持っているのが日本企業である。それを推進してきたのが日本政府である。全くといっていいほど日本には資源がなかった。いやあったけれども人口過密で使ってしまったし、まだあるけれど発見していない。だからここ100年日本は資源がなくてもやっていけるよう死にものぐるいの努力を重ねてきた。そして気がつけば日本は明日の技術で世界一になってしまっている。それに気付く人は少ないが、例えば「水」がある。福井の水はおいしい。なぜなら白山山系に積もった雪が融けて地下に浸透し、数十年、数百年を経て、奥越三河川となり日本海へ流れくだる。若狭も県境の山々から、日本海へと流れくだってくる。この伏流水が土地を肥沃にし、おいしい食を育み、魚影を豊かにする。
しかし地球温暖化は世界の屋根といわれるヒマラヤの氷河の形成に影響を及ぼしている。ヒマラヤの氷河は既に半分が消滅しているという。ヒマラヤの氷河は、メコン川、インダス川、ガンジス川、黄河、揚子江という五大河川の水源地である。この川の水量が少なくなると、下流域の住民の方々の生命維持に重大な影響を与えるであろう。水がなければ食料の増産は不可能である。水がなければ人は3日も生きていけない。
水を川の水や地下水から取るだけではこれからの人類66億人を救うことは難しい。海水や雨水あるいはリサイクル水からの活用のための技術が今必要になってきているのである。そこで日本が開発した逆浸透膜方式の淡水化技術は中近東を中心に世界中で使われている。世界で使われている水の約6分の1が、日本の技術だという。食料の生産に必要なものは水である。その技術を持っているのは日本である。
福井は「福の井」という「水」にちなんだブランドを持っている。豊富でおいしい「水」をベースに、福井において水研究開発、淡水化技術・水リサイクル技術などの研究開発の基地は出来ないであろうか。特に浸透膜の技術は、繊維・メッキ・電子機器等の私達の得意な技術分野なのである。そしてこの開発は地球を救う大事な仕事となる。
またおいしい水を元に作られる穀物や野菜、果実などの事業の育成も期待できる。大規模農業への方向でなく、高付加価値でありながら、福井県で出来る多品質、少量生産、高付加価値の食料生産のやり方を捜していきたいものである。地域は原発周辺の若狭。そして奥越地方や坂井丘陵など可能性は無限である。海上も忘れてはならない。

高速道路料金改訂

平成21年2月17日
高速道路料金改訂

原油先物相場が一昨年から暴騰し、昨年の年央にピークを打ちその後急速に暴落の局面にある。1バレル40US$の近辺である。価格の上昇には長い年月を必要とする。そして上昇の最終局面では暴騰し、ピークアウト後はあっという間に下落に入る。上昇のスピードと下落のスピードは3倍違うといわれている。原油の場合も、これが正確にあてはまった。
ガソリンの市況は、原油相場には連動した動きをしている。上昇もピークも下落も殆どピッタリといえる動きである。ガソリンや原油価格の暴騰は、世界中のあらゆる企業活動、個人生活に深刻な影響を与えた。しかしその余波はまだまだ広がりつつある。原油やガソリン、軽油、重油、ナフサ等の価格は、長い価格上昇の年月を経て、既に昨年央にピークを打ち、現在は3年前の水準以下に落ちているのである。ところが価格の下落が、社会的、経済的な不安心理を鎮めることが出来ていない。不安が不安を呼んでいる。信用収縮が起きている。
高速道路は世界中で殆どがフリーウェー即ち無料である。日本だけが高い通行料を徴収し、「楽市楽座」の資本主義の原則に大きなブレーキをかけている。日本の内需がアメリカのように伸びないのは、すべての通行料、運賃、旅費等の人や物の移動にかかる料金が高すぎるところに問題がある。航空運賃、船運賃(特に倉庫料や乙仲料金に問題あり)、JR私鉄料金、高速道路通行料など、どれをとっても高すぎる。特に高速道路料金はあまりに高すぎた。今回これが引下げられる。実施は3月19日以降、4月1日からであろうか。誰に聞いても正確に答えられる人はいないが、間違いなく安くなる。
ガソリン等の価格下落の影響と、高速道路料金の大幅引下げにより、日本経済の回復は早まると私は考えている。既に外国旅行の料金は史上最安値に近づきつつある。つい最近までナフサの暴騰により航空運賃にサーチャージをオンしていたのが、今は最安値に近づきつつある。
円高差益の還元もすすむであろう。日本で唯一笑っているのは輸入業者である。円高で潤っている人達である。サントリーが史上最高益を更新したと報道されたが、原材料の殆ど100%(水以外)を輸入に頼っている。ユニクロもしかり。円高のメリットを享受しているところが、その差益の社会への還元を速やかに実行することが望まれる。

2050 マイナス80

平成21年2月16日
2050 マイナス80

安倍元総理が「美しい星50」をアジアの環境問題サミットの席上、世界で初めて主張したことを昨日のことのように思い出す。「2050までに温室効果ガスを50%セーブしよう」との呼びかけである。世界全体で50%カットというのは、先進国が80%カットしなければ達成できないはずである。そんな途轍もない目標が達成できるのかと考えるのは当然である。20%カットするのも大変なのに80%もカットなど不可能だとみんなが思った。しかしやらなければ私達の子孫の明日はない。スケジュールを立て、目標を個々に設定し、それに向って世界中が足並みを揃えて努力すれば、不可能ではあるまい。いやその道程で「戦争」や「核戦力」の放棄による省エネにより、目標達成の可能性が近づき、私達の究極の目的である世界平和の実現が目に見えてくるのは間違いない。現在世界のGDPの5〜10%が軍事費で消えていっている。世界中の海を目的のはっきりしない、誤った目的を持った船や航空機が行動中である。「無駄」としかいいようのない行動である。そこでは大量のエネルギーが毎日消費され続けている。
エネルギー効率を高める研究開発の成功の可能性は高い。そこに大きなビジネスチャンスがある。生活が一変すると同時に産業の主役が変るほどの影響力がある。
オバマ大統領のグリーンエネルギーへの莫大な投資の発表があった。新産業の育成により、新しい雇用を生み出そうとの英断である。グリーンエネルギーの可能性を否定する意見がある。風力にしろ、太陽光熱にしろ、変動の振幅が大きく使いづらいというのである。しかし地球規模で対応すればこの解決は簡単にできる。新型電池の開発やエネルギープールの開発の可能性は高い。エネルギー蓄積の研究開発もビジネスチャンスである。成功事例を日本で1つずつ作り上げ、これを各国が見習っていけば、日本の将来は明るくなる。地球の未来も見えてくる。
リサイクルの常態化を生活の中に完全に取り入れることが出来ればこれまた大きな効果をもたらす。リサイクル技術の研究開発もビジネスチャンスである。日本人の知恵が最も発揮できるのはこの分野かもしれない。質素な暮らしの中にも生活の喜びがあるのを知っているのは日本人のはずである。江戸の町はリサイクルの理想の都市という歴史家もいる。日々の変化に右往左往するのでなく、先を見すえた目標を持ちそれに向って行動を起こしていこう。「2050マイナス80」は日本にとっても、世界にとっても、私達にとっても大きなチャンスである。

桜男

平成21年2月13日
桜男

桜の木を愛する人が多い。私もその一人である。桜の木は初春の花芽、南枝綻ぶといわれるやわらかな花芽に始まる。そして三分咲、五分咲、七分咲、満開と続く桜花を楽しむことが出来る。その後は一陣の風に舞う落花である。木には緑の新芽が顔を出している。やがて若みどりの葉が一遍に咲き出す。そして夏の到来と共に葉は深みを増していく。秋を迎える頃には濃い深みどりに変っている。紅葉がまた美しい。紅葉は日に日に色が変化するので、油断がならない。葉がすっかり色づき、はらはらと風に舞い出すと冬が近づいてくる。やがて残り葉に初雪が舞う。黒い細い枝に雪が降り積もると黒と白のコントラストの美しさについ見とれてしまう。私は桜が好きだ。染井吉野は特に好きだ。この桜は成長が早い。人生五十年というが染井吉野の命も人間とあまり変らない。百年も長生きする木は稀だ。北陸では雪の重みでよく太い幹が折れる。この折れた枝の灰を釉薬にお茶碗を焼いている友がいる。青磁である。深い味わいがあり、私の好きな抹茶茶碗の一つである。大切な方への贈り物に使わせてもらっている。
桜男は全国にいるが、有名な人は「笹部新太郎氏」である。宝塚の奥山の武田尾で苗木を育て、これを琵琶湖周辺に植えていた。琵琶湖を桜で囲ってしまおうという遠大な計画である。戦前に「大津さくらの会」を作ってこの遠大な計画に着手。それが今、琵琶湖のあちこちで、桜並木として名所になっている。琵琶湖の湖岸道路沿いに数多くの桜並木が続いている。長浜の豊公園、そして湖北の塩津、葛籠尾崎、海津大崎、湖西線沿いの並木道など桜を楽しむには最高のドライブが出来る。私はこれ等の桜並木を育て上げた笹部新太郎氏の足跡を訪ねてみたいといつも考えている。
福井も桜の名所が数多くある。今年の植樹祭でまた樹木を見直すことになりそうである。

豊田三郎画伯

平成21年2月12日
豊田三郎画伯
起床後約30分をかけて柔軟体操をする。16種類の型を自分で作り、それぞれの型を20回ずつ反復して行う。初めのうちは軽く、回を重ねるごとにより深くしていく。ゆっくりと、力を入れすぎずに行うこと。これが秘訣。最後の20回目は、完全な型がひとりでに決まってくる。
 昨年100歳を迎えた豊田三郎画伯の健康長寿法の説明は以上のような話から始まった。そして身ぶり手ぶり、両手を広げて、大きな声で教えていただく。座談を聞く一時間余りの間、私は画伯から大きな力を与えられた。その大きな力は「生命力」とでも表現できようか。私より30歳も年長であることが、信じられないパワーである。
昨年は100歳を記念して個展を開かれた。そして画集『寿楽無窮』と歌集『現影』の発刊、また記念講演会の開催など、とても100歳とは思えない活躍をされた。記念講演会は約1時間、1人で数百人の聴衆に向って、烈々たる気迫の大演説であった。
今日は私達だけの座談であるが、間近に見る顔容は60歳かとみまがうばかりの若々しさである。私達が建設中のマンションの一画に先生の絵をかけさせていただくことになり、歌集、画集と共に「芽吹く河岸 20号F 2004年作」を預かった。
画伯の住んでおられるアトリエから福井へ帰る車の中で、私はいつもひたひたと胸にせまってくる喜びと、何ともいえない温かい幸せを感じる。今夜はまず歌集をひもといてみようと心に決めて家路を急いだ。
北原白秋最晩年を支え続けた歌人、野北和義氏と知り合った画伯は、短歌を余技といいつつ、愛妻「けさ」さん(日赤病院元看護婦)への妻恋い歌を数多く作られている。そして 亡き妻へ捧げられた歌集である。生涯に幾多の断絶を「けさ」さんの助けと不退転の決意、強靭な意志と節制(ご本人の言葉によると「執着、根気、勤勉」といわれる)によって克服されてきている。そして一筋の道が百年となり、未だに現役である。私の理想「生涯現役」を101歳になってもなお続けておられることに驚く。没後25年になる私の父より年長でありながらの、この元気な生涯現役ぶりである。

頑張ろう三唱

平成21年2月10日
頑張ろう三唱

福井県選出の国会議員福田一先生の選挙運動を、手弁当で毎回応援させていただいた。選挙終盤になると、壇上へ応援者が上り、声を揃えて「頑張ろう」を三唱する。「頑張る」という言葉は。「努力する」ことだけなく、「全力を尽くして努力する」或いは「逆境の中で勝利を目指して努力する」等の意味が込められている。私はこの「頑張る」という言葉が好きでよく使う。
最近になって、あちこちで「がんばらない人生」というテーマの講演の案内や本を見る。うつ病の友人から手紙(ハガキ)をもらったことが何度かあるが、うつ病や精神的に弱い状態になっている人に「頑張ろう」というのは適当でないとのことである。
「ゆとり教育」が提唱され、自主性を重んじる教育が数年間に亘り、実施された。ところが学力低下などの顕著な悪い結果が出て、見直しをせまられた。「頑張らない教育」はダメなようである。教育は子供達に前向きに、何かに向って努力することを教えるものである。頑張らない教育はありえないはずである。
「スローライフ」が叫ばれ、ゆっくり、のんびり暮そうという考え方が浸透しつつある。ストレスの多い日本の現状を考えると、わからないでもない。特に老々介護や不登校の子など精神的なプレッシャーの重圧下にある人には「スローライフ」の考え方がふさわしい。不登校の子供達を集めて自然に触れる教育をし、全員不登校から抜け出せたという話を聞いた。老々介護の場合も積極的に自然と触れ合う生活を取り入れるとよいのかもしれない。
困難な経済環境の中で、私達も日々時代の風に翻弄されがちであるが、「逆境を乗りこえて努力する」ことを忘れてはならない。今日もまた「頑張ろう」を三唱して出発だ。
「いまやらねばいつできる。わしがやらねばたれがやる」
―――九十八翁平櫛田中の色紙より

変化

平成21年2月9日
変化

温暖化の影響で積雪の量が年々減っているように思う。立春を過ぎて昨今は、最も寒いはずである。ところが気温は零度を下回ることは殆どない。目に見えないところで大きな変化がおきているのを感じる。
東京に住んでいた時は季節の変化をあまり意識しなかったし、意識するよすががなかった。ところが福井は雪が降る。雪は一夜にして世界を変える。昨日までの景色が一変する。白銀の世界が広がるのだ。その瞬間「美しい」と深い感動が湧き上がってくる。福井に住む喜び、幸せをかみ締めることができる。「変化」が一夜にして起きる身近な事例がこの雪である。
今回の不況で日本経済はどう変るのであろうか。不況はその後の世界を大きく変える力を持っている。まず輸出依存から内需主導型経済への移行が進むであろうといわれている。そして環境や省エネルギー型産業が成長するであろう。オバマ大統領もこの新しい産業の分野で雇用の受け皿にしたいといっているが、日本こそこの環境・省エネが得意分野である。更に三つ目は究極の目的である高付加価値化への道を歩まねばならない。これ等の三つの変化が起きようとしている。その渦中にあって私達はどう対処していくのかを決定しなければならない。オバマ大統領が熱狂的な歓迎の中、就任したが、「変化」をどのように政策の上で生かしていくのか、大いに期待したい。そして日本も、この不況克服に向けて、全力で立ち向かわねばならない。

悠久の時

平成21年2月6日
悠久の時

現代はストレスに満ちている。人々は、自然から遠ざかり、都市という「人口環境」を作り上げ、快適な生活を送るため都市に集まってきた。しかし過密な環境からおきる「心の病い」や、長寿化にともなっておきる「痴呆症」が増加している。人の心に対する関心はこれから益々増えていくことであろう。
宇宙や地球の起源をたどっていくと、生命の誕生が35億年前、そして人の細胞60兆個の小宇宙にたどりつく。太陽系以外の宇宙の輝きを見るのと同じように、私達は自分の身体の中に小宇宙を見ることが出来る。そして6万年前に既に地上に存在したネアンデルタール人を遥かに遡っていくと動物の脳の原型が出来たのは6億年前、そして6万年前のネアンデルタール人が埋葬や献花を行っていた事実、即ちその頃すでにあった心の存在に気付かされる。
脳と心の関係をたどっていくと面白いことに気付くことが出来る。脳は古い脳(動物が持っているもの)と新しい脳(大脳新皮質=人の脳が異常に大きいのはこれが発達しているから)に分けることが出来る。そしてストレスを解消するメンタルヘルスアップを行うには、古い脳の活性化をはかるとよいという。心身の健全化に役立つという。
私達は家庭、学校、職場、社会など周囲の環境と調和するために常にストレスを受けている。このバランスが崩れると種々の障害が生まれてくる。人類の歴史6万年、脳の歴史6億年と比較すると私達の人生はたかだか80年。悠久の時の流れの中に生を受けている奇跡を思うと、多少のストレスに悩んでいる暇はない。
しかしストレスの解消法は考えておいたほうがよい。それが生活の智恵である。その解決のヒントは「古い脳」や「古い骨盤」といわれる部位にある。人の誕生前から、人以外の動物や鳥などの持っている「古い脳」を活性化することである。
これをNHKでは「心のラジオ体操」と呼んでいる。ここで紹介しておこう。1.楽な姿勢をとる。2.軽く目を閉じる。3.深呼吸を2、3回。4.普通の呼吸に戻し、一気に力を抜き、頭を前に倒す。5.両手両足にそれとなく留意しながら、次の言葉を何回もゆっくりと心の中でいう「気持がおちついている」「両手両足が温かく重い」。6.背筋をのばし両腕の屈伸を3回し、深呼吸を2、3回し、静かに目をあけて終る。
この心の体操を続けると多くのストレス、精神的な悩みの解決につながるという。この方法は日本生産性本部のメンタルヘルス研究所で指導している。「只管打坐」や「真向法」によく似たところを感ずるが、似て非なるものであるのは間違いない。

東雲(しののめ)よりの曙光

平成21年2月5日
東雲(しののめ)よりの曙光

夜明けに東の空が少しずつ赤く染まってくる。薄雲があると、刻々と移りかわる光の饗宴がよりはっきりする。東雲と書いて「しののめ」と呼び、「明け方」「あかつき」を表わす意味がよくわかる。そして雲があるほうが、太陽の光がより美しく見えてくる。雲間に四方八方に、光が輝き出すのだ。私達はよく天から降り下る光や、森の中に差し込む光を絵や写真で見るが、この感動的なパノラマを、私はしばしば福井の自宅の窓から、体験する。この光の饗宴は一瞬にしてその輝きを変える。刻々と赤みを増してくるが、雲の変化と太陽の昇るスピードと位置により、その色も光の形も全く違ったものになる。本を読んでいて、ふと目を上げ東天を見てこの曙光を発見することがある。急いで外へ出て、冬の場合は東南の方向を見ようと思う間に、光が変化することがある。自然の荘厳さを実感する。自分の小さいことを実感する。時の流れを実感する。道元禅師は言っている。「古人は言っている。まず聞けと。そして見よと、そして経験せよと。経験したことがなければ聞きなさい。聞くよりは実際に見たほうがよい。見るよりは経験したほうが更によい」「そして時は流れていく。一瞬も無駄にせず、今の今を大切にせよ。今からはじめるのだ」
道元の言葉をこの朝の光の中で、心底から理解できるのは、ここが道元が常住した永平寺町だからであろうか。道元を京から招き、数百年に亘って守護した「波多野一族」が現在もこの地に住んでおられる。「無私の心、利他の心、信仰の心」がこの一族を守り通してきたのであろう。朝の東南の空を見上げつつ、太陽や自然そして道元や波多野家の方々を思っていた。気がつけば身体は冷え、あたりはすっかり明けてきている。さあ今日もすべてに感謝して出かけよう。

今日に明日をつぐ

平成21年2月3日
今日に明日をつぐ

白洲正子のエッセイの中に明恵上人臨終の言葉として、この「今日に明日をつぐこと」という名文がある。白洲さんの作品は数多く読ませていただいたが、文章の味わい深さと共に、常に現地現物主義というか、好奇心旺盛というか、女性にはめずらしく行動的である。そして直截である。白洲さんはいう。「人生を送るにあたり、知識や教養は自己を磨く道具にすぎず、自己を一心不乱に高めていく以外やるべき仕事はない。しかしこの道は簡単ではない。」
毎日の不断の努力によって、一本の道が出来る。一心不乱にその道を歩いていくとやっと終点が見える。毎日の努力が「今日に明日をつぐ」ことになるのであろうか。「自今生涯」という堀場製作所の堀場会長の話を聞いた。ダイキン工業の井上会長の「フロームナウ」という話も聞いた。「今日に明日をつぐ」という明恵上人の言葉にもよく似た響きがある。
「永遠の時の流れ」の中にたゆとう私達にとって、「今」という「この刹那」に全力を傾注する生き方が大事に思われる。今というこの一瞬、一瞬にすべてを投入し、悔いのない生涯を送りたいと思う。
「敵をつくるな、味方を増やせ」が私のスローガンの一つである。先日冨田商事の冨田社長におあいした時、このスローガンによく似た話を聞いた。「事を起こすに際し、三人の友に利があっても、一人に損をかける仕事だったらやりたくない」といわれる。「今」という時空の糸を紡いでいる私達にとって、利他の心を失ってはならないのは無論のことである。そしてたった一人の人にでも損をかけるような生き方はしたくないものである。凡人の私達には難しいことではあるが、常にこの言葉を胸に刻んで「今日に明日をつぐ」努力を続けていきたい。

実行と先のばし

平成21年2月2日
実行と先のばし

「失われた十年」といわれたバブル崩壊後の十年間、日本経済を襲った嵐は、ここ2年ほどの間に、アメリカを中心に世界で起きていることに非常によく似た点がある。今回の問題のスタートを昨年の春と捉える人がいる。リーマンブラザーズ破綻の9月15日という人がいる。問題発覚したのは実は一昨年の春のNY株式市場の急落の時である。この時サブライムローン関係で、莫大な深刻な問題があることが判明したのである。それ以来アメリカの打ってきた対策は、バブル崩壊後の日本の対応とは異なって。非常にテンポの早いものであった。リーマンブラザーズ以外のケースについて、アメリカは全部を救済を前提に対処している。既に財政による、国家による損失補填は100兆円を超えている。ヨーロッパ特にイギリスの状況もこれに近い。
日本の1990年代の対応は「先のばし」が先行した。今回の世界の対応は、それと逆に「まず実行」である。とに角「救済せよ」との意見が通りつつあるようだ。すべての「信用不安」は、心理的な要因に大きく左右される。1930年にルーズベルト大統領が言った言葉がある。「お互い信じあえば恐慌は去る。自分を信じ、相手を信じよ」この一言で株式の下落は止まり、大きく反転していった。
麻生首相や日本の政策当局の打ち出している補正予算或いは新年度予算の枠組みと、アメリカの政策を比較して、その相似性に驚いた。今回の対応が多少の足並みの乱れがあるにせよ、日、米、欧、中がお互いに連携を保ちながら進んでいることを感じている。今、先のばしは許されない。今先のばしは危険である。あらゆる施策が出揃えば、一時的な信用収縮は雲散霧消してしまう。大切なことは「まず実行」である。それも「from now」直ちに実行することに尽きる。スピード、実行のスピードが求められている。