頑張れ

平成21年4月9日
頑張れ

芹沢光治良の「人間の運命」という大作を読んでいる。数奇な運命にもて遊ばれ乍なら、明治、大正、昭和の疾風怒涛の時代を生き抜いていく「森次郎」という青年の姿を描いている。旧制の沼津中学から一高、東大を卒業していく中で、数多くの少年、少女そして青年男女の人生が生き生きと表現され感動的なシーンが多い。
その中で必死に生きる若者達が帝大三年の時に文官試験を合格した時の模様が書かれている。文官試験は外交科・行政科にわかれていて、一高の仏法、独法、英法などの出身同志が合格を喜び合う場面があった。「日本が文明国の仲間入りをする為に、自信を持って頑張れ!頑張れとは一高生の語彙であり、一高生の精神である」。この「頑張れ」という一語が、第一高等学校の語彙であり、精神だというこの一行に驚いた。
思い返すと、私は学生時代から、「頑張れ!」という言葉を、常に自分に言い聞かせてきたように思う。その「頑張れ!」が一高生の語彙や精神だといわれると、困ってしまう。この「人間の運命」という大作は時代背景の描写も巧みで、登場人物も殆ど実名で描かれており優れた作品である。全6巻という大作で幼少からの人生のいろいろがつぶさに描かれ、久しぶりに感激させてもらった。しかし、この「頑張れ」という私にとって大切な一言を、一高の専売のようにいわれた点は、心にひっかかった。
「一所懸命に、一生懸命に、一心不乱に、集中して努力すること」を「頑張る」という。辞書には「奮闘する、頑強に主張する、元気を出してやり抜く」などある。国会議員の選挙の時など、投票日が近付くと「頑張ろう三唱をお願いします」といって全員で「頑張ろう」を三唱する。この不思議な一言が人間を前向きにする。悲観的になりがちな心を勇気づける。暗くなりがちな心を明るくする。私は自信をなくしそうな時、落込みそうな時、自分で自分を励ます時にこの言葉をよく使う。そしてこの一言の力を信じている。今、世界は、未曾有の困難の中にある。この事態を、この閉塞状態を突破する為にこそ、「頑張ろう」を三唱したいものである。

投稿者: jsb 日時: 2009年04月09日 10:50

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