日本の洋画のあけぼの

平成21年7月7日
日本の洋画のあけぼの

ヤンマージーゼルの創業者、山岡孫吉(1888〜1962)さんの洋画コレクションを見る機会があった。山岡孫吉氏は滋賀県高月町の生まれであったが、高月町は長浜市の北方数十キロの所である。私が幼少の頃すでに長浜市にもヤンマーの大きな工場があった。その工場は、母方の実家の田や畑を買収して大きくなっていったので、他人事ではなかった。また私の寺の住職は、ヤンマーへ勤務していたこともあり、なおヤンマーは身近な存在であった。
昭和8年12月に世界で初めて、ジーゼルエンジンの小型化に成功したとのことであるが、それは私の生まれる前のことであった。戦後のインフレ時代に、不景気が蔓延し、「首切り」という工員の解雇が、大きな問題となった。近所に住む友人の父親が解雇され、一日中ぼんやり川の水面を見つめていたのを覚えている。その後朝鮮戦争が始まり、急に景気がよくなった。
その頃から山岡孫吉氏の洋画のコレクションが始まったとのことである。日本の洋画の黎明期といわれる江戸時代末期から明治時代にかけて、日本画に対する洋画が試みられ、大きな衝撃をもたらした。高橋由一の鮭図、鯛図から、黒田清輝、藤島武二、青木繁などの黎明期の日本人画家に影響を与えた外人達の作品も交えて、数多くの貴重な作品が集められている。
この山岡コレクションの特長は、洋画の黎明期だけに的を絞って集めていることである。そして作品の質の高さも文句なしである。司馬江漢、五姓田義松、チャールズワーグマン、川村清雄などの作品を含めて、板や紙などに油絵具を使ってかかれたものも多い。笠間市の笠間日動美術館に「山岡孫吉コレクション」として収蔵されている。現在のヤンマー株式会社の山岡淳男会長は孫吉氏の長男である。父親の残されたコレクションを戦後の困難な混乱の時代に、大切に維持し、更に充実されたのは至難の快挙である。

投稿者: jsb 日時: 2009年07月07日 10:27

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