北海道民芸家具

平成21年7月15日 
北海道民芸家具

最近悲しい報せがクラレインテリアから届いた。約半世紀にわたって続いてきた「北海道民芸家具」が自主廃業に追い込まれたとのことである。北海道産の樺材をベースとした独特の風合いは、落ち着いた雰囲気を好む者にとっては得難い魅力をもった家具である。「用の美」を提唱した柳宗悦達の考え方を、家具の世界で生かそうとした大原美術館の大原総一郎氏であった。
家具における民芸の灯を消すな」との熱い想いに賛同し、私も東京本社の会長室の家具を、この「北海道民芸家具」で統一した。また福井本社の二階のギャラリーにおいて、「北海道民芸家具展」を開催していただき、好評であった。
ところが、最近は、住宅着工件数が大幅に減少したり、低価格の輸入家具の氾濫、若者の嗜好の変化にとり残され、業績悪化に苦しんでいたとのことである。更に昨年末の「百年に一度という深刻な消費不足のあおりを受けて、自助努力による業績回復が困難と判断されたようである。
「悪貨は良貨を駆逐する」といわれるが、良い商品、残しておくべき商品が消え去っていくのは誠に残念至極である。何とか残す方法はないのであろうか。
幕末から明治にかけて、パリ万国博覧会で脚光を浴びた日本の伝統工芸品のすばらしさを世界の人々が賞賛した。そして柳宗悦が日本民芸館の建設を企画した時、大原孫三郎氏が率先して寄付を申し出した。建設費の殆どが大原孫三郎氏の寄付によった。初代館長柳宗悦の後を継いだ二代目館長は大原氏の長男総一郎氏であった。「用の美」を追求し続けた総一郎氏は民芸家具の産地を北海道に求めたのである。素材は「樺材」を中心とした。信州の「松本民芸家具」と双璧をなす「北海道民芸家具」が生まれた瞬間である。
多くの人々に愛され、親しまれてきたその「北海道民芸家具」廃業のニュースは、暗い世情の中、日本中をかけめぐった。良いもの、日本独自のもの、子孫に残せる家具、この「民芸家具」を残す道はないのであろうか。世界でもトップクラスの繁栄を誇るこの日本において、半世紀にわたって育てられてきた「民芸家具」が消え去るのは誠に忍びない。
インドネシアのチーク材の家具メーカーや、中国の家具メーカーとの連携の中で、新しい「民芸家具」の誕生を考えてくれる篤志家の出現を待ち望んでいる。

投稿者: jsb 日時: 2009年07月15日 09:10

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