勅使河原 宏

平成21年7月24日
勅使河原 宏

映画監督にして、華道家元、そして陶芸家という多面的な顔を持つ勅使河原宏さんとの縁は、越前陶芸村である。草月流という華道界の革新児として有名であったが、福井県宮崎村の「越前陶芸村」に築炉された。日本六古窯の一つ、「越前焼」の福井窯跡が山中に点在する宮崎村から織田町のあたりは、未だに古い陶片を見つけることが出来る。
越前陶芸村の中には、「福井県窯業試験場」があり、陶磁器の研究が行われており、学生も全国から集まってくる。「陶芸館」では、越前焼の歴史、登り窯のカットモデル、古越前のコレクション、多彩な陶芸家達の過去の試行錯誤の跡などをつぶさに見学することができる。「茶室」では毎日観光客のために「おうす」が供されている。協同組合の「売店」もある。最もユニークなのは、この村の敷地の中に数多くの現役の陶芸家達が住んでいることである。住居と陶房と展示場が一体となっている。勅使河原 宏さんの「草月陶房」もその一つである。陶芸に夢中になった宏さんは一年の殆どをこの草月陶房で過すようになった。土づくりから、土をこね、形をつくり、火でものづくりをする。陶芸一筋の生活であった。その時私の義兄土田祐滋との出会いがあり、義兄は草月陶房の留守を預かることになった。
宏さんの「古田織部」という著作の中に、「陶房」で過す福井の生活に触れた文章がある。「寝ていても自然の中」という表現で、自然のすごさ、その自然が変貌していく四季のすばらしさに感動している。「自然が私の中に入りこんできた」「福井の自然の変化は激しく、パッと晴れたかと思えば、すさまじい驟雨となり、ものすごい雷が鳴る」「新緑のころは七色も八色もの若芽が激しく吹きだし、秋も深まると山々は鮮烈な紅葉を見せる」「雪の季節はまた格別だ、雪の知らせは雷鳴で始まる」「福井の平野に虹が三本も同時にかかったのを見た時の神秘的な印象は忘れることができない」「雪は天地を美しく変貌させ、一種荘厳な気品をもって迫るのである」「私が福井でふれたのは巨視的な自然の動き、姿だけでなく、部分としての自然でもあった。一つ一つの植物の表情や、風の流れ、自然のもの音などが、一面の紅葉、一面の銀世界との関係で私の中に深く入りこんできた」「はじめは陶芸に熱中していた私は、この福井の自然にたちまちとりつかれた」「福井で自然が見えてきたのは、福井で生活をしたからである。二、三泊して帰るというのでもなく、期限を定めずにそこに居をすえてしまったからこそ、自然が自分のものになってきたのである。「福井の自然と風土は私を惹きつけただけでなく、さまざまなものをもたらしてくれた」。そして宏さんは陶芸だけでなく「竹」や「和紙」、「古陶」や「茶室」そして「いけばな」や「お茶」へと続く道を福井で発見していったのである。
映画「利休」やそれに次いで撮影された「豪姫」を私は見ていない。他の作品も含めて、宏さんと福井の「越前陶芸村」との関係、そして義兄との関係をもっと詳しく聞いておくべきだったと残念でならない。

投稿者: jsb 日時: 2009年07月24日 09:11

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