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旅
9月5日
旅
叔父が中国の各地で貿易の仕事をしていた。子供心にも外地で活躍する近江商人の姿を思い浮かべ、いずれ自分もと夢見ていた。父母に連れられて年に1,2回汽車で京都へ行った。各駅停車で、黙々と煙を吐いて走る汽車である。長浜、京都間が3時間以上かかるので、早朝に家を出て、帰り着くのは夜遅くになった。窓枠にしがみつくようにして、外の景色を見つづけていた。好奇心のかたまりのようなものであった。大学に入り古美研の友と京都の山野をスケッチブックを持って歩きまわった。夏季休暇と春期休暇は税理士事務所でアルバイトをしていたので、自由な旅は冬期休暇中だけである。信州の菅平高原、野沢温泉そして東京などを歩いた。商社に入り全国の観光地や世界の街を訪れる機会が増え、先進国はほとんど全部訪れた。旅愁を楽しみ、地場の料理を満喫し、多くの友が出来た。旅は人を育てる。私は旅に育てられた。今でもさあ出かけるぞというと妻はどこへまたという。日帰りの旅だと安心するようだ。
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