足し算と引き算

平成21年1月27日
足し算と引き算

企業経営は足し算と引き算である。掛け算や割り算を導入すると間違うことが多い。しかし多くの経営者がこの過ちを犯してしまう。
今回の世界的な金融不安の元は、「金融工学」という数学の常識を無視した理論を作り上げ、この悪用によってもたらされたものである。
日本人は思想的には「引き算」が得意な民族である。難解な哲学や思想を簡略化してしまう異能を持った数少ない民族である。片仮名や平仮名の由来を考えてもよくわかる。また俳句などは17字の中に宇宙を表わすという世界唯一の文学である。禅問答に「只管打座」がある。道元の正法眼蔵の真髄である。この至言を何百年も一途に守り通すことは日本人の精神構造の中でしか考えられない。日本人が思考や生活の中で常に引き算を重視しているから続くのである。
「還暦を迎えたから」とか「満70歳を迎えたから」とか言って、生活を縮小したり、仕事を整理したりする友人が多い。精神的にも肉体的にも若い頃と同じようなことは無理である。それは当然それなりの対応をせざるを得ない。しかし年齢を重ねたからこそ出来ることがあるのを忘れては困る。それを見つけ、そしてその為に残りの人生を有意義に過すことが肝要である。引き算ばかりでは駄目だ。足し算も時には必要だ。場合によっては、足し算こそが熟年になって出来る「社会貢献」なのかもしれない。
偉人伝を毎日読んでいると、偉人といわれる人々の「最後の十年」は、引き算に終っていることは皆無である。何かをこの世に残した人々は、最後の十年もコツコツと足し算を繰り返し、この世に恩返しをしていっている。
今年の経営者の頭にあるのは「コスト削減」ばかりのようである。引き算を必死に考えている。果たしてその考えは正しいのであろうか。信用収縮はそれで解消するのであろうか。私は反対の意見を持っている。この困難な時こそ、お互いが信じ合い、明るい日本を作り上げる絶好のチャンスなのである。何をどのように「足し算」することが出来るのか、智恵を絞ろう。そこにこそ私達の未来がある。

投稿者: jsb 日時: 2009年01月27日 09:02

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