明暗

平成21年3月3日
明暗

先日オリックスCEO宮内義彦氏の講演を聞いた。アメリカ発の世界同時不況の現状とその対策について、適確な分析をされており、大いに参考になった。その時示されたデータの中に、興味深い数字があった。2008年の日本の輸出入の月別金額である。輸出が輸入を上回るのが日本の常識であったが、昨年8月に逆転し、それ以降10月、11月、12月と輸出は前年を大きく下回って減少し、遂に本年1月は前年比マイナス46%と落ち込んでしまった。輸入も11月、12月、1月と前年比マイナスではあるが、輸入額は輸出額を大きく上回っている。輸出をしている大企業は、影響力が強く、マスコミへの発言力が強いので、円高のデメリットが強調されているが、私は日本にとって、日本国民にとって円高は悪ではないと信じている。宮内氏の意見も全く同じで意を強くした。
日本の国富である不動産価格や株価が、ここ30年来の間の安値に放置されている。世界でも稀有な日本の家計金融資産1,500兆円は、深い眠りの中にある。これ等の資産は円高がすすむことにより大きく価値を上げることになる。ドルベースで国際的な価値が上るのである。
例えば1,500兆円を1ドル90円と換算すると16.7兆ドルになる。1ドル70円とすると21.4兆ドルとなる。同じ1,500兆円であり乍ら4.7兆ドルも増えてしまうことになる。円高は日本にとってプラスであることを再認識してほしいものである。
石油のコングロマリットのエクソンモービルやBPの今年の利益が4兆円や2兆円と発表された。日本でもユニクロやビールメーカー等円高で大きな利益を上げている明るい企業も多い。円高で泣いている暗い企業ばかりではないのである。私は21世紀の日本の課題は内需拡大だと考えている。宮内氏の指摘も全く同じで、日本経済の65%を占めるサービス産業の付加価値率の向上が望ましいとの見解であった。その付加価値率は30年間に3.8%から1.3%まで下落してしまっている。これを元に戻すだけで日本経済は大きく発展するのである。
ものごとに裏表がある。明暗がある。円高という現象を取り上げても、円高によるメリットとデメリットがある。明や暗に一喜一憂するのでなく、先を見据えた対策等を打ち出すことが大切である。危機に際しては政策実行のスピードが求められる。オバマ大統領のスピードと、麻生首相のスピードに差があるのが気がかりである。

投稿者: jsb 日時: 2009年03月04日 11:38

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