スペースシェアリング

平成21年3月12日
スペースシェアリング

日本の文化の特長はスペースシェアリングである。住居について考えてみると、かつては結婚式もお葬式も自宅で開くのを常とした。その同じ座敷で夜は眠り、朝になると床を上げて、神棚に礼拝し、隣の仏壇に経をあげた。朝食を準備し、食べ終わると座卓を片付けて元の座敷に戻る。時にはご近所の人々の集会場になったり、子供の誕生パーティの場になったり、使い方は自由自在であった。
コインパーキング事業はこのスペースシェアリングの考え方を採用したのである。駐車場は通常特定の個人や法人の為の専用であった。一番数が多かったのが「月極駐車場」という名の、各月ごとの契約による駐車場である。その「月極め駐車場」の「月極め」という契約を「時間貸・日貸・週貸・月貸し」という長短自由自在の契約に変えたのがコインパーキングである。このシステムの変更により、僅かの追加投資で売上は大きく伸長した。同時に利用者の方々から「便利になってよかった」という声が上り、近隣の商店街の方々からも感謝の言葉をいただいた。このシステムの変更は、タイムシェアリングとスペースシェアリングを同時に行った方式である。冒頭にあげた日本家屋の部屋の使い方によく似た方式である。
これからの日本は「まちづくり」や「都市再生」について、このタイムシェアリングとスペースシェアリングの方式を取り入れていく必要がある。例えば地方都市の中心部の空洞化が著しい。この利用方法は、空店舗を借上げて、他の人々に貸すこと。小学校の生徒が極端に減少したので、教室を他へ転用すること。大きい店舗やビルを小間に仕切り、他の用途に転用すること。一つのスペースを何人かが時間別に利用することなどが考えられる。
カーシェアリングは「レンタカー事業」が世界的に普及しているが、更に数人、数家族で1台の車を共有し、共同利用する方法が一般化しつつある。即ち「所有」と「利用」を分離する動きが、現代では顕著化してきたのである。それが車から、駐車場へそして住まいから店舗へビルへと広がってきた。更にこの動きを「まち全体」へ拡大していく必要がある。
すでにヨーロッパの都市では、何世紀も前から古い鉄道の駅舎を美術館にしたり、発電所を美術館にしたり、用途変更が盛んに行われている。スクラップアンドビルドでなく、一度作った建物やまちを残しながら、それを生かす道を考えたのである。要介護の人達が集まって生活する「グループホーム」や、ホテルと賃貸マンションの中間に位置する「ウィークリーマンションやマンスリーマンション」もその一例である。
「柔軟な発想」と同時に「所有権と利用権の分離」を前提に、新しい「都市再生=コンパクトシティ誕生」を実現していく知恵と勇気を持つ必要がある。21世紀の日本の地方都市再生のキーワード、それがスペースシェアリング(タイムシェアリングを含んだもの)である。

投稿者: jsb 日時: 2009年03月12日 10:29

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://119.245.185.34/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/1599

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)