春を訪ねて

平成21年3月30日
春を訪ねて

子供の頃から東京には縁の薄い人生を送っていた。生まれて初めて東京を見たのは、同志社大学へ入学した後、東京方面の大学へ入学した友人達に招待された時であった。東京駐在の役員になってからは、休日には必ずあちこち出歩いて見聞を広めた。関西人にとって、関東は、特に東京は異国のようにうつったものだ。政治、経済、芸術、文化、あらゆるものごとが一極集中している様子は、関西人にとって少し異様な感じを受ける。刺激が強すぎるのかもしれない。
そんな時、関東のチベットといわれる房総半島を訪れるのは、ささやかな息抜きの時間であった。特に本州で菜の花が最初に咲くといわれる外房の海岸線の旅は楽しい。小さなトンネルを抜けるたびに景色が変り、海の色が変化する。露地栽培の春の花が目いっぱいに飛びこんでくる。太平洋岸を北上する黒潮の影響を受けて、外房は暖かい。
東京出張にことよせて、今日は久しぶりに外房の上総興津の家へ泊ることにした。興津港から約500メートル、海抜30メートル程のところ、小さな谷川のせせらぎが聞こえる所に建てた家である。敷地は200坪あまり、花木を植え、ハーブ園を作った。敷地が八ノ字に広がっているので後方の森と山が自分の庭であるかのような眺望である。海を望む家もよいが、海の景色は「目が点になる」といわれるように変化に乏しい。山や森に面した家は四季の移ろい、一日の変化、刻一刻と変る木々の動きは見飽きることがない。特に春がよい。まず菜の花やれんぎょうが咲き、梅が咲き桃が咲き桜が咲く。それから続く草、花、樹木の競演は見事である。
外房の海岸線を白浜・館山方面へ向ってドライブしてみよう。東京湾横断道の海ほたるの料金が引き下げられて、急に車が増えたようであるが、まだまだ過疎地の面目は失っていない。のんびり、ゆったりの世界である。外房には高山はない。それだけに風景は優しく、穏やかである。花畑では露地栽培の色とりどりの春の花が咲き乱れている。「花摘み園」である。ほしい花を好きなだけ持ち帰ることが出来る。子供の頃にかえって花を摘んでみよう。
夏には海水浴客で賑わう海岸も、今日はダイバー達がいるだけである。ウェットスーツの若者に声をかけて、更に南を目指して車をスタートさせる。春風が頬に心地よい。
 

投稿者: jsb 日時: 2009年03月30日 10:20

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