柱時計

平成21年4月23日
柱時計

私の子供の頃には、どこの家にも柱時計という振り子のついた時計が、家の中心にかかっていた。バネで動く時計なので、ラジオの時報にあわせて、時計調整をすると同時に、数日に1回、2つのネジ穴のネジをまく必要があった。チクタク、チクタクと動く時計は、夜の静寂の中で生きているかのようであった。その「振り子」についての話をしたい。
幼い頃この振り子を見つめていた記憶がある。振り子は正確に反復運動を繰り返している。振り子は振り切れることなく、必ずまた返ってくる。そしてその繰り返しである。これが私の幼児体験として残っている。即ち「振り子は必ず反復運動を繰り返す」というのは真理である。
私の学生時代就職試験の時1958年は「ナベ底景気」であった。就職先がなかった。しかし留年した友は一流企業に入った。景気が回復したのである。1973年第一次オイルショックが発生し、物価急騰、世の中が激変した。しかし2年で沈静化した。1979年第二次オイルショックが再度発生。1983〜87年円高不況、1991年バブル崩壊、2001年ITバブル崩壊、2008年金融危機と景気の谷を列記したが、谷底と谷底の間には、必ず高い山があった。それが時計の振り子と同じように好景気と不景気の両極端を往きつ、戻りつしているのである。
ところが人は特に経済評論家やマスコミの論調は、景気のよい時は「好景気は続く」という見方をする。逆に不景気の時は「不景気は3年続く」という。よく調べてみると、3年続く不景気は殆どない。不景気の中にも、景気の山が存在するのである。
人はある考えにとらわれる習性がある。時計の振り子が右へ動いている時はいつまでも右へ動き続ける錯覚を持つ。これは錯覚である。振り子は必ずまた戻ってくる。振り子が左へ動いている時は、逆にいつまでも左へ動くかのように考えてしまう。これ又錯覚である。間違いである。振り子は左から右へ方向転換をする。
名経営者や哲学者の至言はこの振り子の心理を見抜いた上での言葉が多い。「不景気の時は、好景気になった時のことを考えて、事前に手を打っておけ」「好景気の時は、いずれ来る不景気のことを思い、早目に、手を打っておけ」「好、不況に一喜一憂するな、永遠に続く好況も不況もない」「消費が冷え込んで売れなくて困ると考えるのはおかしい」「嵐は永久に続かない、楽観はしないが、悲観もしない」「さあ大変と慌てふためくな、冷静に、手早く対処せよ」「困難な時こそ新技術が生まれ、不況が去った時その技術が生きる」「勇気を出して挑戦せよ先の見えない不況はない。よく見て挑戦するのだ」「付和雷同するな、世間の動きは遅い」・・・
先人はみんな振り子の原理を見通している。私は柱時計の振り子のことを思い乍ら、永遠に続く不況も、永遠に続く好況もないことを忘れてはならないと肝に銘じている。

投稿者: jsb 日時: 2009年04月23日 10:17

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