痛み

平成21年9月15日
痛み
すべての人間に平等に与えられるものは時間である。いや人間だけに限らず地上に海中に生けとし生けるものに平等に与えられるものが時間である。その時間の長短はあるが、すべての生きものは、生まれた時間から「死への旅」をはじめているのである。
死は人間にとって永遠のテーマである。死を克服することは不可能であるが、死を忘れることは出来ない。死との対話は、芸術の領域でも、大きなウェイトを占めている。宗教の領域ではなお更であり、医学や科学は死への挑戦の歴史でもあった。
秦の始皇帝も、徐福も、永遠の生命を与えてくれる不老長寿の薬を求めた。日本における徐福伝説のあまりの多さは、一体いかなる理由によるものであろうか。しかし伝説の多くは「不老長寿の薬」といわれる「薬草」を上げている。「良薬口に苦し」という「薬草群」である。
現代人の2人に1人はガンにかかるという。3人に1人の死因はガンであるという。ガンは痛みを伴った病気である。疼痛の病気である。先に妻がガンでなくなった。発病して3年。疼痛との闘いであった。座薬が多少効いた。モルヒネの注射は嫌っていた。
母は満86歳まで生きた。ガンの疼痛に耐えて、神仏にすかって生き続けた。死の間際まで意識はしっかりしていた。2006年に「ガン対策基本法」ができて、ガンの疼痛緩和治療が明文化された。日本では麻薬であるモルヒネ類の使用は、それ迄公然とは認められていなかったのである。その為世界の最先端であるはずの、日本の医療現場で使用されている医療用麻薬の使用量は、ドイツの5分の1以下、アメリカの3分の1といわれている。埼玉県ガンセンターの、WTOガン疼痛治療指針の治療成績によると、モルヒネ等を使用すると87%が全く痛みを感じない、9%がほぼ痛みを感じない、4%が軽くなったとの結果である。効かないというのは0%である。
モルヒネを使用すると中毒になるという。ガン患者は激しい痛みと戦っているので頭の中にダイノルフィンが常に放出されていて、ドーパミンの放出を抑制する。だから決して中毒にはならないという。2008年日本医師会の調査によると、約半数の医師が、中毒症状を引き起こし薬物中毒になると誤解していたという。
疼痛緩和医療を普及させる為に、医師と患者とその家族に対して、国や製薬メーカー、マスメディアが、もっと責任をもって強力に啓蒙活動をしていくことが必要である。高齢社会がどんどん進んでいる中で、寝たきりやぼけに苦しむ家族が増えている。ガンの場合は痛みさえとれれば、死ぬまで頭脳明晰である。どちらが幸せか考えてみてほしい。「死ぬならガンで」という人が増えてきているのだそうである。

投稿者: jsb 日時: 2009年09月15日 09:59

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://119.245.185.34/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/1760

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)