帰れふるさとへ

ブログ
平成22年8月17日
帰れふるさとへ

「ふるさとは遠きにありて思うもの、そして悲しくうたうもの、よしやうらぶれて異土のかたいとなるとても帰るところにあるまじや」という室生犀星の詩がある。心に残る詩である。
「男児 志を立てて郷関を出づ、学 若し成る無くんば復た還らず、骨を埋める 豈墳墓の地を期せんや、人間 到る処青山あり」という漢詩もある。覚悟のほどが痛いほど伝わってくる漢詩である。
現代の社会は病んでいる。前記の二編の詩にあるようなロマンチックな時代と異なり、今は社会全体が病んでいる。人間が本来大切にするべき親子、家族、親戚、地域社会との関係が希薄になり、個人個人が孤立する社会になってしまっている。
親と子の関係がまず深刻である。親が子を可愛がるのは本能といわれているが、親が子を殺したり、放置したり、監禁したり、折檻しすぎて死亡させるケースがどんどん出てきている。子供の育て方は、三家族同居であれば、おのずと伝授されていくものである。それが個や孤の時代となって、父親も母親も子育てのノウハウがない。まして子供がありながら離婚するケースになると途端に行き詰ってしまう。
老人の孤独死も悲惨である。兄弟や子供はいないのであろうか。近所の人達の無関心も許せない。健康長寿世界一といって世界中の国々から羨ましがられている日本で、老人の孤独死や行方不明が多いのは何としたことであろうか。
大学の卒業生の10万人が就職できないという。また留年組が更に10万人いるという。20万人もの学生が自分の進むべき方向が決まっていないとは信じられない事態である。私は1959年卒である。ナベ底景気のナベ底の頃に卒業したが、不景気でメーカーの求人は殆どなかった。しかし就職できない者、卒業を延ばした者はごくごく少数であった。どこかに自分の居場所を求めて、その場所を一生懸命の職業、一所懸命の地と決めて努力したものである。
私は子育てに悩む人、老親を心配する人、就職できない人に「ふるさとへ帰れ」と声を大にして言いたい。自分の原点に戻って、もう一度新しい人生を送る為のスタート台に立つのである。挫折でもいい。一度ふるさとへ帰ることをすすめたい。ふるさとには山や川や海がある。方言があり、友がいる。再生の道はそれ程難しくはない。

投稿者: jsb 日時: 2010年08月17日 17:54

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://119.245.185.34/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/2016

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)