ワイン戦略に学べ

平成22年8月24日
ワイン戦略に学べ

最近まで、パリをはじめフランス国内の高級レストランでは、フランスワイン以外のワインを提供するのはタブーとされてきた。世界一を自負するフランス料理には、フランスワインが最もふさわしいという信念がそうさせていたのである。一種の「こだわり」がそうさせたのである。
ワインはぶどうから作る果実酒である。冷凍技術のなかった時代には、収穫と同時にワイン製造が始まり、その年のすべてのぶどうは需要動向に関係なく、即座にワインにされていった。熟成や貯蔵が必然的に研究され、年代ものの「ワイン市場」がひとりでに形成されていったのである。
ワインヤードは土地の地味、気候、日照など風土の大きな影響を受ける。「ワインの神バッカスは丘を好む」といわれ、高級ワインといわれるものは、日本流に置きかえてみると、福井県の大野市の真名峡近くの山田さんの1号田畑のブドウから作られるというように、限定する産地が小さい程、高級になっていく。
そして例えば2000年のぶどうの生育がよかったということで、2000年ものが珍重されるおまけまでついてくる。そしてワインジャーナルによってこのビンテージチャートは変る。また価格も大きな影響を受ける。
また政治面の影響も大きい。1995年シラク大統領が核実験再開を発表した年、日本へのボジョレヌーボーの輸入は激減した。フランスの高率な相続税や富裕税の導入は、家族経営を続けてきたワイナリーやぶどう畑の所有者に大きな打撃を与えた。ワインビジネスは、保険会社やコングロマリット、投資家のものとなりつつある。
日本酒も明治までは古酒が一般に好まれ流通していたが、明治時代に生産した酒に税が課せられること(造石税)になり、納税後の在庫負担に耐えられない蔵元は一斉に古酒を中止し、一年で売り切りが100年間定着してしまった。古酒もその市場も殆ど完全になくなったのである。それが戦後になり蔵出税が導入されるようになり、古酒、熟成酒が次々と作られるようになってきた。日本酒がワイン戦略を学ぶチャンスがやっと訪れてきたのである。失った歴史を探険するだけでなく、ワインの世界戦略を学ぶことにより、日本の国酒として長い間、君臨した日本酒が、再び日本国内でのシェアーを回復し、更に世界市場へ、寿司や和食と共に打って出ることが可能になる。
その戦略の第一は「ブランドの死守」である。そして地域色の明確化である。古酒、熟成酒ビンテージのマーケティングも大切である。アルコール度数の低下や酒ビジネスジャーナリズムの育成も必要である。健康長寿の日本酒をこれからの若い世代にしっかりと引継いでいきたいと切に願っている。
 

投稿者: jsb 日時: 2010年08月24日 09:51

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