2016年06月のアーカイブ

親友の死

6月29日
親友の死
会議中に友人から電話が入った。実家の裏隣の家に住んでいた同級生の死を伝える電話だ。ヤンマーディーゼルの技師長を務める父親を持つ秀才で、中学、高校時代を共に過ごした。大学卒業後はOB会で年1回程度旧交をあたためていた。地方トップの進学高校の3年間は放送部員として毎日顔を合わせた。家へ帰ってからもお互いの家を往来し、兄弟同様であった。就職は父親のヤンマーディーゼルに入社し、私は商社へ入ったが、彼も貿易業務にたずさわり、私も貿易部長として働いた時期があり、話題に事欠かなかった。突然の訃報のあと何人もの友人達から同じ電話が入り、早すぎた逝去を残念がった。みな満80歳をこえつつある。立派な後期高齢者である。親友の死はつらい。他人事とは思えない。身辺整理を急がねばと思いつつ、生涯現役の看板を下ろすわけにはいかない。是か非かまことに難しい。

英離脱ショック

6月28日
英離脱ショック
まさか離脱はないと思っていただけに、離脱決定に世界中が沸いた。日本でも円ドルレートは99円をつけ、株価は日経平均の一日下げ1300円を超えた。世界も同じ反応をし、為替も株も大混乱をはじめた。短期間で正常化するのか、或いは長い不況に入るのか、意見は分かれるが、不況の始まりと見る方が多い。リーマンショック以上のショックといわれる。となると長いトンネルの入り口に立たされたのかもしれない。世界的な需要不足が起きると一番困るのは中国である。安全パイは金と円が世界の注目を集めて急騰している。円高対策を急がねばならない。同時に不安をとり除く為の世界的な更なる金融緩和が必要だ。

地方の魅力

6月26日
地方の魅力
文春は愛読書の一つである。在イタリアの作家塩野七生さんが日本のおもてなしにふれていた。ユニークなおもてなしのポイントが二つ。ひとつは温泉宿、次は居酒屋である。日本の治安、清潔、親切の三大特長に加えて温泉宿と居酒屋を上げている。私も賛成である。日本は火山列島。どこへ行っても温泉は豊富、そしておいしい日本酒の酒蔵が多く、居酒屋文化は花盛りである。地方創生のモデルとしてシステム化すると面白そうである。塩野さんは温泉の利用方法を30分間1組で使わせるユニークな入浴方法を提案している。同じく定番の夕食を全廃し、旅館の近くの居酒屋と提携(店内店でもよいと思われるが・・・)して、メニューは客に選ばせるというこれまたユニークな夕食のアイデアである。このアイデアの欠点は、大浴場の他に中浴場的なものを少なくとも10ヶ分増設する必要があることである。家族風呂を拡張することで解決するのかもしれないが・・・。とに角やってみる価値がある新機軸である。

地方のまちづくり

6月25日
地方のまちづくり
2014年に国交省は都市更生特別措置法を改正し、都市の再生について、立地適正化計画の立案を求めることとなった。医療福祉、住宅、商業、ホテル、駐車場などの一体化を求めている。既に札幌市、熊本市、蓑面市、諏訪市などで計画が進行中である。2016年度には全国で100都市程度の申請が期待されているという。果たして地方都市にそれほど投資する余力があるのかどうか。長い間都市開発の第一線でまちづくりを見てきたものにとっては疑問を感じざるを得ない。地方の中心市街地は沈滞の底で呻吟している。その原因は固定資産税の重税感と地価の高止まり、そして更に顧客の郊外居住と、郊外立地の場合に比して購買の利便性という何重にもわたる原因によりかつての中心市街地の空洞化が全国で進んでいる。地方には地方の能力しかない。その経済規模にあった投資しかできないのである。バブル絶頂の頃に全国で起きた過剰投資による倒産劇は目を覆うものがあった。投資は社会にとって重要ではあるが、身の丈に合ったものでなければならない。

対応力

6月24日
対応力
どんな困難に直面しても解決方法は必ずあるものだ。それを必死に探す努力を放棄しなければ道は自ら開ける。何度ももう駄目だと思った瞬間があった。特に若い頃は多かった。そんな時、頼ったのは何だったのか思い返してみる。「天」であったり、「神」「仏」そして「家族」「友人」などが思い浮かぶ。日常の努力の積み重ねも重要なファクターだ。そして思い至るのが「自信」である。他力本願、自立本願と宗教家は自説を曲げないが、私達凡人にはどちらも大切である。あらゆるものに助けられ、支えられている人生の貴さを思い、自分に出来ることを続けていきたい。

孫文

6月22日
孫文
中国の革命の父、孫文を知る人は少なくなった。私は中国を訪問してその足跡に触れ感動した。彼は日本で学び、しかもその師は福井県人である。彼はその師を生涯愛し、師からいただいた勇気をかてに革命の父といわれるまでに成長した。そして言った。「基礎は固めた。道は定まった。行ってくれ。臆せず、屈せず、道は遠いが俺たちがいる」中国が西欧列強の侵略に呻吟している時、同胞に向かって孫文は血を吐くような言葉を残している。その子は今も台湾に住み、台湾と中国を自由に往来して孫文の遺影を守っている。日中の関係が難しい昨今、日本で学んだ多くの中国人や韓国、台湾人を知っている。日本は西欧列強に追いつくために帝国大学を各地に設立し、国民の教育に万難を排して取り組んだ。東京、京都に最初に誕生したのが明治30年。北海道、東北、九州と五帝大がやっと揃ったのが明治末。次が京城帝国大学(大正13年)につづいて台北帝国大学(昭和3年)。京城は今のソウルである。日本の大阪、名古屋の帝大よりもずっと早くソウルや台湾に帝大を設立した当時の日本の教育方針の崇高さが身に染みる。このことを知る中国人や韓国人はいるのであろうか。

禅の里

6月21日
禅の里
福井県は神仏の国である。お寺の数も神社の数も全国第2位と多い。ということは日本一信仰の厚い県である。どんな村落へ行っても神社は必ずあり、お寺は必ずある。それも一つずつではない。特に永平寺系の禅寺(曹洞宗)が最も多く、次が大谷派そして本願寺派とつづく。浄土真宗各派の本山があり、その勢いも強いが臨済宗の大安禅寺(越前松平家墓所あり)も異彩を放つ存在である。また道祖神や地蔵も多い。生活のなかに神仏への信仰が生きている。それが福井である。禅は難解といわれる。浄土宗や浄土真宗が急速に信者を増やしていったのも、その原因の大きなものが仏教の難解さにある。特に「不立文字」(文字に表せないもの)「教外別伝」という考え方が根底にある。そして禅問答があり更に坐禅がある。とっつき難さが増していく。そこで道元の下に帰って考えてみよう。まず彼が主張する「坐禅」とは何か。坐禅は「捨てるためにある」という。私達は何かを得るため、何かを悟るために坐禅を組もうとするが、それは逆だという。まず「調息、坐禅、調心」とつづくのである。坐る癖がつけばおのずから判るというのである。息が整えば、背筋が伸び、頭の中のもやもやが消えていく。悟りとはいう気はないが、それらしい清々しさは感じる。

生活保護

6月19日
生活保護
高齢者が生活保護を申請せざるを得ない状況が起きている。聞いてみると厚生年金の払込年数が少なく、国民年金のウエイトが高くなっており、年金の手取り額が少ないので生活が出来ないという。日本の年金制度は世界的にも優れたものと聞いていたが、調べてみると不備が目立ち不平等社会の最大の原因になりつつある。まず第一は、年金制度そのものが憲法違反である。年金制度が議員年金、公務員年金、厚生年金、国民年金と分かれており、その徴収額、支給額とも大差がある。議員年金や公務員年金は優遇され過ぎており、国民年金では最低生活も不可能である。貧困者への救済策であるはずの生活保護費の支給が、国民年金支給を大きく上回っている現状である。日本国民は法の下、平等に生活する権利を有している。これ程不公平な年金制度を続けていては三権の長以下、立法も司法も行政も大きな責任を問われることになりかねない。早急な是正を希望する。

伸びている企業

6月18日
伸びている企業
伸びている企業には常に変わったところがある。ユニーク経営をしているのだ。その内容はさまざまだが、他社と同じやり方、考え方、実行の仕方でないことははっきりしている。徹底的に考え抜いた結果の斬新なやり方なのか、永年の社是社訓によるものか、社長の素晴らしいリーダーシップによるものか、中身に違いはあるが組織が活性化している点は同じである。判りやすくいえば「炎の経営」をしているのである。人と違うことをやるのは、大変勇気を必要とする。しかしそれを敢然と行うことで成長が出来る。ブレイクスルーすると伸びるのである。ある繊維産業の企業が、業績が低迷しているので他の部門に進出。それが当たって好調を持続。その時思い切って繊維関連を止めようかと考えられたとのこと。そしてやり方を変えて継続する方法を考えつき、今や業界トップレベルまで回復したようである。その方法が、他社にまねの出来ない事を実行に移し、それが多くのお客様の指示を受けたと聞いた。差別化を徹底して実行し、しかも10年計画でそれをやり遂げられた。ユニーク経営の理想像である。

6月17日

漆の発祥の地は日本である。ジャパンウェアといわれるゆえんである、漆は中国が起源といわれてきたが、縄文時代の昔より木製のクシや土偶や土器に漆を塗ったものが次々と発掘され、中国よりも古くから高度な独自の文化を持っていたようである。特に国宝の指定を受けている6体の縄文土器は世界でも類似のものが乏しく、漆の文化圏といわれるアジアモンスーン地帯の中で最も古く、最も精巧なものである。漆塗りの土偶は数千年を経てなお、光り輝いており、完成度も高い。漆の文化はヒマラヤ山脈に発するアジアモンスーン地帯に植生する漆の木と共に数千年の長い期間に細長い地域の国々で発展してきた。今なお、日本の漆を頂点として、照葉樹林帯の各国で生産されている。今秋ブータン王国の技術者を福井県に招き、技術交流がはじまる。福井県は日本最大の漆器生産高を誇る産地である。3年来の交流の結実の一つとなるよう陰乍ら支援していきたい。

失敗したから成功できた

6月15日
失敗したから成功できた
人生は失敗の連続だ。そして七転び八起きで成功する人。20数回失敗し、もう一度生まれ変わってでも成功するぞといったのは吉田松陰である。孔子にしても松陰にしてもその志を継いで多くの弟子が育っていった。失敗が人を育てたのである。失敗からは多くのことを学べるが、成功から学ぶことは少ない。大切なのは失敗から必ず立ち直る根性を持っていることだ。不撓不屈の根性を養おう。それが教育だ。そしてそれが成功への唯一無二の道である。失敗から立ち直った人には凛とした気品がある。

国家財政

6月14日
国家財政
日本国は世界一の財政赤字を抱えている。もし国家を企業に置き換えてみると、そんな国即ちそんな企業のトップも幹部も即刻辞任を要求される。ギリシャやイタリア、スペインの赤字が云々されているが日本の赤字はそれを遥かに超えた赤字である。政府も日銀も日本の赤字に対する借主は日本国民だから赤字でも問題ないと主張している。これは日本国の毎年の決算書が正しく公表されていないからこんなレベルの低い議論がなされるのである。即座に国家財政も、地方財政も毎年PLだけでなく、BSも発表すべきである。そして正確な日本国のそして地方公共団体の財務状況を国民に知らせる必要がある。公表することで当然失政も明確になり、責任の所在もはっきりしてくる。毎年PLだけでなくBSも同時に公表せよと主張したい。この要求はマスコミも含めて国民の義務である。権利と同時に義務であることを忘れてはならない。

経済クラブ

6月12日
経済クラブ
創立して早や47年が経過した。私が第8代理事長を勤めさせていただいているが、経済界としてのメンバーの層が薄いのが気になっている。景気の動向にも左右されるが、年齢の壁もあり、問題が山積みしている割に、つい先送りになり、反省している。新幹線着工が進んでいるが地元への貢献度があまりに薄いのが気がかりだ。地元回帰、地方創生はまず足元の一つ一つの積み重ねからやらねばならない。

越のくに

6月11日
越のくに
所得格差が問題となっている。年収100万円〜200万円(確定申告をした者)の比率が一番多いという。これは生活困窮者が増えてきていることを意味する。逆に1世帯当たりの年収が最も高いのが福井、石川、富山、新潟の4県のかつての越のくにである。この地方の特長は1世帯当たりの所得者の数が多い、即ち稼ぎ手が多いことである。ダブルインカムでなくトリプルインカム以上の世帯も多い。長寿県でもあることで年金をもらう人が多いのも理由の一つであろう。気候は厳しく、積雪地帯であり、粘り強く辛抱強い気質の人が多く、働き者の多い土地柄である。日本海の山海の珍味を楽しめる。縄文、弥生の時代から大陸や半島とは深い交流があり、日本列島の中でも文化の先進地域であった。

手づくり

6月10日
手づくり
ハンドメイドと英語で表現すると高級イメージを持つ人と試作品のような不完全な製品と受け取る人とにわかれる。日本語の手作りとは、機械で作った均一で無機質なものでないあたたか味を感じさせるものとのイメージが定着している。伝統工芸といわれるものはほとんど手作りである。柳宗悦は手仕事といい芸術家の作品と分けてこの職人技を高く評価した。陶器の制作は今でも手づくりが中心。そしてさきおりや着物の制作も同じ手づくりである。ブータン王国の首相フェローを一年間勤めた御手洗瑞子さんが東北ではじめた編物も手づくりである。手づくりの特徴はじっくりと時間をかけてやるものと思っていると間違える。かなりのスピードで手際よく仕上がっていくのだ。そこに熟練の技が生きている。同じく作り手の人間味が微妙に反映されていく。ぬくもりを与えてくれるのである。

県民1人当り平均個人所得 沖縄は169.7万と全国最低

6月8日
県民1人当り平均個人所得 沖縄は169.7万と全国最低
歴史的に見ると、北海道と沖縄には開発庁が置かれ国政としての取り組みが継続して行われてきた。北海道は既に全国でも中位の所得水準に達しているが、ひとり沖縄だけが非常に低い水準にとどまっている。アメリカの軍事基地のほとんどを引き受けさせられている現状を考えても、沖縄への国の支援の手薄さに驚かざるを得ない。県民1人当りの平均個人所得を調べてみると全国最下位が沖縄県で1人当り年間170万円である。トップの東京が347万円なので、丁度東京の半分以下の所得しかない。北海道は209万円で沖縄よりずっと高く1.2倍以上ある。悪い県は佐賀・宮崎・高知・鹿児島・秋田・愛媛県などだがそれでも180万円以上ある。沖縄がなぜこれほど低所得なのかを考えてみると、少ない肥沃な土地と産業が育っていないことが挙げられる。沖縄復帰後44年も経過しているが、沖縄県知事が抵抗するのもそのあたりへの真剣な対応を迫っているのであろうか。観光産業育成を中心とした国の対応が待たれるところである。

トレッキング

6月7日
トレッキング
観光資源が豊富なブータン王国の観光局に強く推奨しているのが、トレッキングコースの整備である。ブータンには大小のものが数多くある。日帰りのものから1ヶ月のものまで変化に富んでいる。初級、中級、上級に分かれており、ネパールのそれと比較すると大名旅行に近い。花のコース、氷河湖コース、ヤク放牧地コース、山の湯と山村風景コース、ジャングルコースなど希望によって全く違う雰囲気が味わえるものとなっている。このトレッキングを観光の目玉にするという考え方は地方創生という日本の課題にもふさわしいものと思い、調べてみた。NPO法人の「日本ロングトレイル協会」が既にあり、18コースが加盟中。更に20コース以上が整備中、検討中とのことである。本部は長野県小諸市。ドライブコースは各地に作られてきたが、サイクリングロードに加えて、人の歩く道「トレッキングロード」を整備することで地方活性化の可能性が急拡大する。熊対策さえしておけば後は何の心配もない。トレッキングロードは温暖な日本の風土に最も適した観光資源である。

GNHと儒教

6月5日
GNHと儒教
ブータンが国連で提唱し、国内でも5ヶ年計画に組み込んで今や国是となった感のある「GNH」である。ブータンミュージアムを設立し「幸福学」についての諸研究や「GNH」についての研究者の論文を見る機会が増えた。またブータンへの訪問団も過去6回に亘って出した。ブータンでは毎回CBSとGNHRのプレジデント ダショーカルマウラからの指導を親しく受けている。またブータンに長く滞在された仏教研究家、尊敬する今枝由郎博士からも数度にわたり高説を聞いた。また臨済宗相国寺派の管長有馬頼底猊下からは面談の機会を数度いただくと同時に対談までさせていただいた。ブータンのロンポやケンポの方々との懇談も数度に及んだ。そしてブータンのGNH思想の根源をなしているのが「仏教」であることに遅まきながら気づかされた。福井県は禅の里でもある。曹洞宗の大本山永平寺があり、県内にも禅寺が多い。永平寺は日本仏教の中でもその修行の厳しさを言われるが「只管打坐」と坐禅を最も重視している。禅宗は鎌倉時代に中国から伝来しその後日本人の精神文化に深く浸透した。明治に入り鈴木大拙により禅は海外に紹介され、世界に多くの信者をつくっていった。禅は不立文字といって文字でなく釈迦の教えを禅画で示すことが多い。「瓢鮎図」や「慧可断臂図」「十牛図」その中の「円相図」が有名だ。十牛図は十図あり、まず牛を求める旅にはじまり牛をとらえて家に帰る六つの段階がある。尋牛、見跡、見牛、得牛、牧牛、騎牛、帰家である。そして牛と自分と世界が一体となる忘牛存人、人牛倶忘をへて、無限の幸せを生むこの世へ帰る返本還源、入鄽垂手となる。その8番目の人牛倶忘はただ円だけを描く。一円相又は円相図といわれる。ブータンの仏教による幸福と福井県民の信仰心がどのように幸福感につながっているかを研究テーマに是非加えたい。道元の思想を辿ることは只管打坐の禅の心に近付き、幸福への道を探すのに最もふさわしいのかもしれない。

本挟

6月4日
本挟
かつて和綴じの本が多かった頃、本だけを持ち歩くことが難しかった。例えば謡曲本などである。その時「本挟」というものを使った。学生時代に厚紙で作られたものを使った経験がある。先日骨董屋をのぞいたら店の隅に木製の本挟を見つけ思わず懐かしく買って帰った。本を挟んでみて、紐をかけて持って見ると一気に学生時代に飛んでいったような気分になった。木製で丁寧な仕上げで美しい。木目も見事に合わせてある。角がすべて丸く加工してある。本を挟んで、机の上に置いて楽しんでいる。

日本酒

6月3日
日本酒
福井の地酒はおいしい。これは私の独断と偏見だけでなく、全国を数年毎に転勤する大手企業の支店長や工場長、子会社社長の意見を集約しての話である。特に「梵」と「黒龍」と「一本義」の三銘柄を上げる人が多い。今回その三蔵の一つ、「梵」をつくっている合資会社加藤吉平商店について紹介したい。私は企業経営者の一人であるが、学者、政治家、行政マン等の友人知人が多い。「職業に貴賤がない」といわれているが、どの職業についても「ユニーク」な発想、「ユニーク」な実行が求められることに変わりはない。梵の加藤社長の考え方、経営方針全てがユニークなので経営の秘訣として参考にするとよい。まず梵(英語名はBORN)の商標登録を世界各国で取得している点。製品のユニークさでは、アルコール添加はしないこと(ほとんどの酒蔵は添加している)。純米酒しか作らないこと(他に例が少ない)。1年以上の貯蔵酒しか作らないこと(他に例がない)。高級酒しか作らないこと(他に例がない)。20階建てのビル型工場を建設中であること(他に例がない)。そして蔵を見学して良く分かるのはその貯蔵量の多さである。5年物のタンクだけでも巨大なタンクが林立している。すべてが低温冷蔵でしっかり管理されている。味は絶品であることは言うまでもない。世界を股にかけて歩くトップセールスを行っている加藤社長の姿はまぶしい。まさに長寿企業中の希望の星、日本酒業界のエースである。和食の世界遺産につづき、日本酒の世界遺産指定が待たれるが、その推進役にふさわしい人物である。

墨染桜

6月2日
墨染桜
久しぶりに京都の観世会館の第19回片山九郎右衛門後援会能を楽しんだ。早いもので幽雪氏一周忌追善能である。いつも席は「は列38番」に座る。この席から幽雪先生の能を楽しませていただいた年月を憶う。面を透して師の眼光を身近に感じた日々をなつかしんでいたが、今日の墨染桜は馴染みのない演目だ。調べてみると今回で僅かに3度目の上演。九郎右衛門の演技は故幽雪の若い頃を思わせるものが出てきてたのもしい限り。復曲能を見事に演じ終え、芸域に広がりを感ずる。また観世銕之丞による善界白頭も囃子方との裂帛の気合いのやりとりが誠に絶妙。楽しい。これまた観る機会の少ない演目であり、今日は楽しい一日となった。外は折からの雨、近くのティーハウスでしばしダージリンティと甘いケーキをいただき余韻を味わった。

伝統産業

6月1日
伝統産業
この30年間に日本の伝統産業は低迷をつづけている。特に伝統工芸の世界は、従業者数、生産額ともに8割減となってしまった。死活問題である。各地で数百年もつづいてきた匠の技が今消えようとしている。この貴重な人類の宝ともいうべき伝統工芸を残す方法はないのであろうか。その品質の高さ、技術の確かさ、その完成度、使えば使うほどよさがわかるのだが、残念乍ら若者の目に触れる機会が少なくなってしまった。これも核家族化現象による遺産継承の不具合である。機会を増やして伝統工芸のよさを子々孫々に伝えていきたい。販路開拓のためのプラットホームづくりにも知恵を貸していきたいと思う。