秘すべきもの

11月日
秘すべきもの
観阿弥が秘すべきものとして、芸の深奥の心を説いた書がある。「花伝書」である。片山幽雪師から、身をもって示していただいた。年老いて身体が動かなくなっても舞台の上で能を演じる師の姿からは、まさに鬼気迫るものがあった。能装束の華やかさの下で、芸の花をいかに持ちつづけるか、いかに花を表現するのか、師の姿からにじみ出る芸の花ともいえる一挙手、一投足に目を奪われていた。何年前のことであったろうか。日本の文化を世界に伝えたいと茶道と能を選んで、茶道の各家元や、能の片山家に映像をインターネットで放映することを提案したことがある。約1年余り前のことである。ところが日本では「秘仏」を尊ぶ風習が強く、貴いものはむやみに人前にさらすことを喜ばぬ傾向が強い。すべて断られた。当方は好意で持ちかけたのが、理解されず、「秘すべきもの」の解釈の差ともいうべき、見解の相違に驚いた。金閣寺の撮影は有馬頼底猊下のご理解をいただき、美しい映像を世界に流している。さらに四季のうつろいを紹介したいと考えて準備中である。その為でもなかろうが、連日大変な観光客が殺到しており、映像の静寂さを味わえることを期待してきた人々には、誠に気の毒な状態となっている。

投稿者: jsb 日時: 2016年11月08日 15:09

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